【詳報】岸田首相、政治とカネ「透明性が課題」と言いながら、茂木氏団体の資金移動は… 自民への企業献金556億円「政策ゆがめず」(2024年3月8日『東京新聞』)

 
参院予算委員会は8日午後から、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件の問題などについて、集中審議を行った。
裏金事件を受け、岸田文雄首相が改革すべき「最大の課題」に挙げたのは、政治資金の透明性だった。その透明性を巡って、野党は、自民党茂木敏充幹事長の政治団体間の資金移動を「脱法行為だ」と問題視した。
野党の追及に、岸田首相はどう答えたのか。国会論戦の模様を詳報する。(デジタル編集部、政治部)
 
参院予算委で答弁する岸田首相=国会で

参院予算委で答弁する岸田首相=国会で

◆13:40 資金移動に岸田首相「本人が説明責任を」

社民党福島瑞穂氏は、自民党茂木敏充幹事長が多額の政治資金を自身の資金管理団体から使途公開基準が緩い後援会組織に移していた問題を追及した。
福島氏は、国会議員の不適切な事務所経費の問題を受け、2007年の政治資金規正法改正で国会議員関連の政治団体は1万円以上の支出の使途公開を求められることになった経緯を紹介。
透明性を高める改革を行ったにもかかわらず、関連政治団体ではない後援会組織に資金移動して規制を逃れた格好の茂木氏について、福島氏は「付け替えれば透明度を低くできるというのは、制度を熟知した脱法行為だ」と厳しく批判した。
 
自民党の茂木敏充幹事長

自民党茂木敏充幹事長

岸田文雄首相は、政治団体間の資金移動について問われると、「今の法律の範囲内で、法律が守られる中で行われている」「それぞれの団体の目的や性格に基づいて、その目的を果たすために必要な資金が移動されていると承知している」と答えた。
 
「それぞれの団体の目的や性格に基づく」と言っても、茂木氏の場合、資金管理団体も後援会組織も、会計責任者も住所も電話番号も同じ。
 
福島氏が「自民党の中で止めるように指示すべきだ」と迫っても、岸田首相は他人事のように「実態を最もよく知る本人が説明責任を尽くすべきだ」と述べるにとどまった。

自民党茂木敏充幹事長の政治資金を巡る問題 茂木氏は2009~22年までの14年間で、資金管理団体から使途の公開基準が緩い政治団体茂木敏充後援会総連合会」に、寄付という形で計4億4590万円の資金移動を行っていた。資金管理団体は「国会議員関係政治団体」として、人件費を除く1件1万円超の経常経費や政治活動費の支出明細を公表するよう義務づけられている。後援会総連合会は「その他の政治団体」に該当し、支出明細の公表が必要なのは1件5万円以上の政治活動費のみ。政治資金の透明性を高めるルールが資金移動によって骨抜きになっていた。同様の会計処理は、新藤義孝経済再生担当相や小泉龍司法相も指摘されている。

◆13:44 安倍派・下村博文氏の出席要求

福島氏は続けて、自民党派閥の政治資金パーティー事件を巡り、衆院政治倫理審査会(政倫審)への出席が取り沙汰されている安倍派の下村博文氏の対応を取り上げた。
「何も(下村氏の出席を)阻害するものはない。総理、自民党として、衆議院の政倫審の出席、よろしいですね」。福島氏は、岸田首相に確認を求めた。
岸田首相は「政倫審の規則において本人の意思を尊重するという項目がある。この規則・ルールに従って開催方法、本人の出席、これが確認されるものであると認識している」と述べ、明言を避けた。
下村氏は、安倍派内で裏金のキックバックの廃止や復活が協議された2022年の会合に出席しており、何らか裏金の実態を把握している可能性がある。
 
下村氏は、安倍派の重鎮である森喜朗元首相(元安倍派会長)との間に距離があるとされ、衆院政倫審への出席の実現は「安倍派への配慮もありなかなか厳しいだろう」(自民中堅)との見方もある。

◆13:45 福島氏「企業献金、政策に反映するため」

23年間になんと556億円、1年間に24億円―。
福島氏は、自民党の企業・団体献金の実態についても追及した。
「企業団体献金がまさに政策を反映するために出されているということが明らかだ」とし、「大企業から(献金を)もらうことで、まさに法人税は下げる、労働法制は規制緩和する。誰のために政治をやっているのか、大企業のためにやっている」と指摘した。
自民党の政策が企業団体献金によってゆがめられているという指摘は当たらない」
岸田首相は、こう反論し、「自民党の政策決定のプロセス、国民の声を聞きながら、政策を決定するに当たっては、官僚組織、あるいは有識者の意見を聞きながら、数百人の国会議員が何日にもわたって議論を積み重ね、政策を決定している」と述べた。

◆14:19 下村氏出席要求に岸田首相「本人が」「規則が」

立憲民主党の森屋隆氏も、福島氏に続き、下村博文氏の政倫審出席を訴えた。
「もう国民は誰がキーパーソンなのか分かっている」
下村氏の政倫審への出席を迫ると、岸田首相は「関係者において説明責任を尽くしていきたいと考えている」とはぐらかす。
森屋氏は「下村議員は準備していると本人言っている。(出席)させない理由がない」とたたみかけたが、岸田首相は「政倫審の規則自体が説明者の意思を尊重するということになっている。規則に基づいて政倫審の運営が判断されるものと考えている」と再び論点をずらし、最後まで質問に正面から答えることはなかった。
 
参院予算委で質問を聞く岸田首相=国会で

参院予算委で質問を聞く岸田首相=国会で

◆14:24 小泉進次郎氏の「オンライン研修会」追及

森屋氏は、派閥の政治資金パーティーを批判していた小泉進次郎環境相が「オンライン研修会」で利益を上げ、政治資金収支報告書には詳細な報告の必要ない「その他の事業」として記載していたとする「週刊ポスト」の報道も取り上げた。
週刊ポストによると、小泉氏は新型コロナ禍の2021年に4回のオンライン研修会を開き、計1200万円を超える利益があった。記事は、政治資金パーティーのオンライン開催は認められないとする総務省の見解と、「オンライン開催が政治資金集めの新たな抜け道に利用できてしまう」とする識者のコメントを紹介している。
オンライン研修会への見解を問われた岸田首相は、「国民は政治とカネの問題に大きな疑念の思いをもっておられる。信頼回復のためにさまざまな努力をしなければいけない。オンラインにおける会合についても、説明責任を尽くすことが求められると認識している」と答弁した。

◆15:06 岸田首相「政治資金の透明性がポイント」

「政治に対する国民の信頼は今、地に落ちている」
公明党上田勇氏は、こう切り出し、岸田首相に政治資金規正法改正など政治改革の決意を問うた。
岸田首相は「民主主義の基盤が揺るぐ深刻な事態」「自民党としては真摯に反省」と裏金事件への受け止めを語った。
その上で、岸田首相が「重大な課題」に挙げたのが、「政治資金の透明性」と「政治家の責任の厳格化」だ。
自民党の政策が企業団体献金によってゆがめられているという指摘は当たらない」と福島氏の指摘に反論していた岸田首相。「自民党としても企業団体献金政治資金パーティーについて、国民の疑念を晴らさなければならない」とし、「政治家の責任厳格化、外部の監査の導入、デジタル等による透明性の向上のため政治資金規正法改正の議論を今進めている」と述べた。
国会議員に毎月100万円支給されながら、使途公開が義務づけられていないとして批判の強い旧文通費(調査研究広報滞在費)の見直しについては、「議員活動に必要な経費の実費精算的な性格が強い。必要な経費の範囲とか額についても、(各党派で)共通理解を得ることと併せて議論を進めるべきだ」と述べた。