防災行政に女性の視点が求められている。しかし、現状は不十分だ。予期せぬ災害に備え、万全の態勢を整えたい。
県内の市町村で、防災・危機管理部門に女性職員が1人もいない「女性ゼロ」の市町村は34市町村で、全体の82・9%だったことが本紙のアンケートで分かった。
自然災害などによる避難生活で、性別を理由に不平等で不自由な思いを被災者に強いてはならない。安心して過ごすためには女性の視点が求められる。不安なく使用できる簡易トイレの設置や整理用品の確保など、細やかな配慮が必要となる。
しかし、本紙のアンケートからは市町村の防災行政で女性の人材活用が遅れていることがうかがえる。そのことが市町村の防災計画にも影響する可能性もある。
災害時に女性に配慮した防災計画の有無について聞いたところ、「ある」と答えたのは33市町村だった。問われるのはその内容だ。
防災計画策定のために設置する地方防災会議のメンバーに「女性がゼロ」の町村は5、「1人しかいない」は7町村だった。最も女性比率が高かったのは浦添市の21・6%だが、国が2025年までに目標とする女性委員の比率30%には届かない。女性の避難生活に対応した計画なのか精査する必要がある。
例えば、避難生活で課題となる妊産婦を含む女性や高齢者らのトイレの確保である。
本紙アンケートでは、県内41市町村の約8割に当たる33市町村で、簡易トイレなどの備蓄数が足りていないことが分かった。備蓄ゼロの自治体もある。識者は「トイレ問題は災害関連死につながる。命に関わる緊急事項として取り組むべきだ」と指摘する。
避難時に配慮が必要な“災害弱者”である妊娠中の女性が避難生活を強いられる場合、急激な環境の変化によるストレスで、血圧の上昇やぼうこう炎、切迫早産などが指摘されている。産道感染の恐れもある。被災地で清潔なトイレの整備は急務だ。
県外では災害時に妊産婦や乳幼児を専門に受け入れる「福祉避難所」の整備も徐々に広がっている。女性の避難生活には必要であろう。能登半島地震で福祉避難所の重要性が再認識された。沖縄でも整備を進めたい。
避難生活では性被害も憂慮される。仕切りのない大部屋で男女が一緒に生活するなどプライバシーが制限される避難生活では、毎日の着替えもままならない。授乳や着替えができる女性専用のスペースを設けたり、不安を相談できる窓口を設けたりするなどの配慮が求めらている。
防災行政や防災計画の内容が男性中心になっていないか。各市町村で点検し、必要なら見直しを進めてほしい。誰もが円滑・迅速に避難でき、不安なく避難生活を不安なく送れるよう、社会全体で向き合わなければならない。