落雷事故 屋外活動中は予兆に注意を(2024年4月25日『読売新聞』-「社説」)

 これから夏場にかけて雷が多い季節になる。スポーツや行楽など屋外での活動も増える時期だけに、落雷に対しては十分な注意が必要だ。

 宮崎市にある私立高校のグラウンドで今月、サッカーの練習試合中に落雷事故が起き、高校生18人が病院に運ばれた。当時、グラウンドには100人以上の選手や指導者がおり、さらなる惨事となる可能性もあった。

 グラウンドやゴルフ場など開けた場所では落雷が起きやすく、スポーツ競技中の事故は過去にも起きている。2014年には愛知県内の高校で、野球部員が落雷を受けて死亡した。誰もが遭遇する危険のある災害だと言えよう。

 今回の事故を受け、文部科学省は全国の教育委員会などに注意喚起の文書を出した。屋外で活動する際は、指導者が事前に気象情報を確認し、天候が急変した場合は、 躊躇ちゅうちょ せずに計画を変更したり、中止したりするよう求めている。

 雷鳴や稲妻のほか、厚い黒雲が頭上に広がる、気温が低下し突風が吹く、といった現象は、雷の危険信号だとされている。こうした予兆があった場合は、速やかに避難行動を取ることが重要だ。

 宮崎市でも、昼前は遠方に雷鳴が聞こえていた。その後、雨は断続的に降っていたものの、事故の発生までは雷鳴のない状態が続いていたという。雷鳴がないからといって危険が去ったとは即断できない点に注意する必要がある。

 宮崎県内では昨年、雷注意報が発表された日数が145日に上った。日本海側では、冬場に雷が多発しており、年間30~40日観測される地域もある。

 屋外で活動する場合、責任者や指導者は、前日から天気予報に気を配ってもらいたい。気象庁がウェブサイト上で10分ごとに更新している「雷ナウキャスト」を活用し、当日に最新の情報を確認することも有効だろう。

 落雷から身を守るには、建物や車の中へ避難するのが原則だ。近くに避難場所がない場合は、電柱や建造物の周囲で姿勢を低くすることが比較的安全だとされる。

 ただし、この場合も、電柱などから4メートル以上離れないと、雷の直撃を免れても人体に雷が伝わり、被害を受けることがある。

 以前は「金属を身につけていると落雷を招く」「レインコートやゴム長靴を着用していれば安全だ」などと言われたが、文科省の通知によると、落雷を阻止する効果はないという。正しい知識と対策で、安全の確保に努めたい。