ゴジラとビキニデー(2024年3月6日『佐賀新聞』-「有明抄」)

 映画「ゴジラ―1・0(マイナスワン)」を見た。焦土と化した終戦直後の日本が舞台。自分の中の「終わらない戦争」にけりをつけようと、ゴジラに立ち向かう主人公も格好よかったが、「特撮の神様」と評される故・円谷英二さんの思いを受け継ぐような撮影技術が素晴らしかった。ノミネートされている米アカデミー賞の発表が楽しみだ

ゴジラは1954年に第1作が公開された。「水爆大怪獣映画」のうたい文句で分かるように、ゴジラは人類が見つけた「核」の爆発によって誕生したという設定だ

◆この年の3月1日、米国が太平洋ビキニ環礁で水爆実験を実施、静岡県のマグロ漁船「第五福竜丸」が被ばくした。このことから、3月1日は核兵器廃絶と世界平和を願う「ビキニデー」になっている

◆ただ、ビキニ環礁での核実験は46年から始まっていた。犠牲者が出ないと愚かな行為だったことに気づかない。人類は同じ過ちを何度繰り返せば気が済むのだろう

ゴジラ誕生からの70年は核兵器廃絶を目指した歩みと重なるが、核の脅威は解消されていない。被ばくから半年後に亡くなった第五福竜丸の乗組員の最期の言葉は「原水爆の犠牲者は私を最後にしてほしい」だった。核兵器が平和を守ってくれるわけではない。取り返しのつかない「負の遺産」はゴジラで最後にしたい。(義)