行政のデジタル化に向けて、政府は、全国の自治体が各自の仕様で運用している住民情報のシステムを2025年度までに統一した仕様に移行させる目標を掲げています。この目標について、全国のおよそ1割の自治体が間に合わない見込みであることが分かりました。

政府は、全国の自治体が各自の仕様で運用してきた住民基本台帳や住民税など20のシステムについて、連携がしやすいよう2025年度までに統一した仕様に移行させる目標を掲げています。

これについて、政府が全国1788の自治体に調査したところ、およそ1割にあたる171の自治体が間に合わない見込みであることが分かりました。

この中には、
大阪府や埼玉県といった6つの府県のほか、
横浜市名古屋市といった20の政令指定都市
▽新宿区や渋谷区といった東京の10の特別区などが含まれます。

また、これとは別の50の自治体からも「目標までの作業完了が難しい」という声が上がっていて、政府は引き続き精査するとしています。

デジタル庁は、実際の作業にあたる「ベンダー」と呼ばれるIT事業者の数が限られるうえ、作業自体も膨大なことなどが背景にあるとみて、間に合わない自治体には猶予期間を与えるとともに、ベンダーどうしの情報共有を促すなどして作業の効率化を図りたいとしています。

“IT事業者”限られ 見つけられないケースも

目標に間に合わない見込みの自治体が相次いでいる背景のひとつには、実際の作業を担えるIT事業者の数が限られることがあります。

60万人余りの人口を抱える静岡市は、対象となっている住民基本台帳や住民税などの業務について、独自にシステムを構築し、運用してきました。

住民税など一部のシステムは、およそ40年前に構築したものを改修を重ねながら使ってきました。

政府が、統一した仕様に移行させる方針を打ち出したことを受けて、作業を担えるIT事業者を探しましたが、事業者の数が限られるうえ、全国の自治体からの発注が集中していて、目標とされる期限までに作業を完了できる事業者は見つからなかったといいます。

このため静岡市は対象となっている20の業務のうち、住民税や介護保険など10の業務では、2025年度には作業が終わらず、すべてが完了するのは、2年程度、後ずれする見通しだとしています。

静岡市デジタル化推進課の久保田敦之課長は「20業務のシステムを一斉に移行するというのは前代未聞の規模感で、どこの自治体も経験がなく、当初から、このスケジュールはかなり厳しいという認識だった。行政のデジタル化は住民にもメリットがあるので、国のスタンスは間違っていないと思うが、もう少し、自治体と協議しながら進めて欲しかった」と話していました。

河野デジタル相 “デジタル庁も自治体のバックアップを”

統一した仕様への移行がおよそ1割の自治体で政府目標の期限に間に合わない見込みとなっていることについて、河野デジタル大臣は、5日の閣議のあとの会見で「最終的にしっかり移行できることが大事で、今の時点で、『多い、少ない』と言っても始まらない。目標がなければズルズルといってしまうので、目標を決めるのは大事なことだ。なるべく誤りがないよう、速やかに行っていただきたいし、デジタル庁も、しっかりと自治体をバックアップしていきたい」と述べました。