CO2地下貯留 脱炭素へ実用化が不可欠だ(2024年2月27日『読売新聞』-「社説」)

 脱炭素のために、火力発電所などから出る二酸化炭素(CO2)を回収して地中に埋める技術の重要性が高まっている。実用化に向けた国の環境整備が急がれる。

 政府は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという目標を掲げている。

 そのため、太陽光発電など再生可能エネルギーの普及を進めているが、日本には適地が少なく、急拡大は難しい。当面は、火力発電を続けざるを得ない。

 また、鉄鋼や化学メーカーなど、現状ではCO2の排出量をゼロにするのが困難な業種もある。

 そこで注目されているのが「CCS」と呼ばれる技術である。

 特殊な膜などを使って、発電所や工場などの排ガスからCO2を分離・回収した後、船やパイプラインで沿岸の貯留地点まで運び、海中などに漏れないように、深さ1キロ・メートル以上の固い地層の下に閉じ込めるものだ。

 エネルギーの安定供給や産業活動を維持しながら、脱炭素を図るために不可欠だと言える。

 政府は30年までの実用化を目指している。50年の排出ゼロの達成には、年1・2億~2・4億トンの貯留が必要だとの試算もある。

 CCSの技術自体は確立している。政府が北海道で行った実証試験では30万トンの貯留に成功し、過去の地震でも漏れなかった。

 既に、大手電力会社や鉄鋼、商社などが九州沖合や北海道沿岸などで事業化を計画しており、国による支援の強化が望まれる。

 一方、CCSを実施する事業者への規制などが不明確だとして、法整備を求める声が出ていた。

 これを受け、政府は、CCSに関する新たな法案を今国会に提出し、年内の施行を目指す。

 国が事業者を公募で選ぶ許可制とし、許可を得れば、適地かどうかを確認する試掘や、実際にCO2をためることを可能にする。

 また、事業者に対し、CO2が漏れ出していないか、監視する義務も課す。漏えいなどで地元に被害が生じた場合には、仮に過失がなかったとしても、賠償責任を負うことを定めている。

 安全性の確保は必須だ。国や事業者は、周辺住民や漁業者の理解を得て、地元の不安を軽減するよう最大限、努めねばならない。

 コスト削減も課題となる。現状は、回収から貯留までにCO21トン当たり最低1万円以上かかる計算だ。官民で、CO2を効率的に回収し、安価に輸送できる技術の開発を進めてほしい。