自衛隊が昨年参加した多国間の共同訓練が56回を数え、現在の運用体制になった2006年比で18倍に増加したことが読売新聞の分析でわかった。有事などを想定した「戦術・戦闘訓練」の比重が増え、6割を超えた。中国が軍事力を膨張させ、北朝鮮がミサイルの発射を続ける中で、自衛隊がインド太平洋地域の国々と連携し、抑止力を強化している状況が浮き彫りになった。
06年の多国間訓練は3回で、その後は2~10回で推移。海自の護衛艦が中国艦艇から射撃レーダーを照射され、緊張が高まった13年に20回を超えた。中国の空母が初めて太平洋に出た16年の翌年に30回となり、23年には56回となった。
一方、米朝首脳会談で一時的に緊張が緩和された18年や、コロナ禍で訓練が制限された20年は減った。
高度な連携が必要となる「戦術・戦闘」の項目を含む訓練は10年代から増え、23年は全体の64%を占めた。
23年の訓練56回のうち、約6割が海で行われていた。高い練度が必要となる潜水艦を探知する訓練も12回あり、シーレーン(海上交通路)の安全確保を重視する傾向がうかがえた。訓練場所は東シナ海や日本海など日本周辺が18回、東南アジアが10回、南シナ海が4回だった。
日本は、訓練を円滑に行うために食料や燃料を融通し合う「物品役務相互提供協定(ACSA(アクサ))」を1996年に米国と結び、2010年以降、豪英加仏印独とも締結した。米国は23年の訓練のうち50回に参加。米国と同盟を結ぶ豪州が23回、韓国が16回と続いた。