石井かほり監督が能登で見た「予想外に明るい表情」…チャリティ上映に酒造・製塩に迫る映画提供、海外でも(2024年3月2日『東京新聞』)

 能登半島地震の被災地を支援しようと、石川県奥能登地域の酒造りや揚げ浜式製塩に迫ったドキュメンタリー映画のチャリティー上映会が、国内外に広がっている。製作などで10年間、能登に通った石井かほり監督(45)=東京都=が呼びかけ、これまでに150カ所以上で上映会が開かれた。石井さんは「能登は第2のふるさと。力になりたい」と恩返しのため奔走する。(井上京佳)
奥能登の酒造りを捉えたドキュメンタリー映画「一献の系譜」の一場面=石井監督提供

能登の酒造りを捉えたドキュメンタリー映画「一献の系譜」の一場面=石井監督提供

 映画は、珠洲(すず)市の揚げ浜式製塩に携わる人を撮影した「ひとにぎりの塩」(2011年)と、日本四大杜氏(とうじ)の一つの能登杜氏の酒造りを捉えた「一献の系譜」(15年)。いずれも石井さんが監督を務めた。

◆監督の呼びかけに問い合わせが殺到

 地震発生当日の1月1日、石井さんは「映画が息の長い応援のツールになれば」とフェイスブックでチャリティー上映会を呼びかけた。通常、上映会の主催者には1回3万円でDVDを貸し出しているが、チャリティー上映会では、入場料や会場で集めた義援金能登半島地震の支援に充てることを条件に格安で販売し、何度でも上映できるようにした。
 呼びかけには問い合わせが殺到し、2月22日時点で152カ所で上映会が企画された。開催地は国内にとどまらず、ニューヨークや中国、イタリア、イギリスなど海外にも広がる。

◆立ち上がろうとする人たちを、思いっきり応援したい

 映画製作で出会った人の多くが被災し、命を落とした塩作りの職人もいた。石井さんは、1月末に石川県輪島市七尾市のまちづくりに携わる知人を訪ねた。甚大な被害でさらなる過疎化が心配される中、予想外に明るい表情だった。「自然の恵みを受けた暮らしが、自然の厳しさと背中合わせだと分かっている様子で前を向いていた」と石井さん。自然とともに生きる能登の人たちに魅了され、10年余り夢中で通ったことを思い出し、さらに活動に力が入った。
石井かほり監督=本人提供

石井かほり監督=本人提供

 石井さんは休みなく問い合わせに応じ、各地の上映会に登壇している。「地域の人たちが困ったときに助けてくれて、たくさんの愛情をいただいて完成した映画。この地で立ち上がろうとする人たちを、思いっきり応援したい」と力を込める。DVDは6600円で販売している。問い合わせは、能登半島地震支援チャリティー上映事務局=noto.shien.movie@gmail.com