【詳報】安倍元首相のもと、4幹部で裏金還流廃止決めたのに… 西村康稔前経産相、復活の経緯問われる 政倫審(2024年3月1日『東京新聞』)

自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた衆院政治倫理審査会(政倫審)が29日に続き、3月1日午前9時すぎから始まった。
この日、最初の審査は、安倍派の有力者「5人組」の一人、西村康稔経産相。安倍派で2021年10月~22年8月、派閥を取り仕切る事務総長を務めた。この間、22年のキックバックは行わないとの話し合いが幹部間であったとされる。
裏金作りへの関与を追及され、西村氏はどう答えたのか。質疑を詳報する。(デジタル編集部)
西村康稔氏(左)と枝野幸男氏(右)

西村康稔氏(左)と枝野幸男氏(右)

◆9:08 西村氏の弁明始まる

西村氏は冒頭、「政治団体清和政策研究会の政治資金の問題に関して、このような事態を招き、国民の皆さんの政治不信を招いたこと、幹部の一人として心よりお詫び申し上げます」と陳謝し、軽く頭を下げた。
安倍派幹部として裏金事件の責任として「幹部の一人として、けじめをつけるべきと判断し、経産大臣の職を辞し、捜査に全面的に協力してきた」と説明。自身の関与については「捜査を尽くした上で処分しないことになった」と強調しつつ、「今後も引き続き説明責任を果たしていく」と述べた。

◆9:10 キックバック「歴代会長と事務局長との間で」

西村氏の弁明は続く。
西村氏は安倍派事務総長を務めた約10カ月の間、若手議員の人事の調整や政治活動の支援・協力・指導などに当たっていたとして、「清和会(安倍派)の会計には一切関わっていませんでした。今の時点まで清和会の帳簿、収支報告書などを見たことがありません」と弁明した。
衆院政治倫理審査会で弁明する西村前経産相=1日午前(代表撮影)

衆院政治倫理審査会で弁明する西村前経産相=1日午前(代表撮影)

派閥パーティー券の売り上げノルマ超過分のキックバックについては、「歴代会長と事務局長との間で長年慣行的に行われていたので、会長以外の私たち幹部が関与することはありませんでした。私は問題が表面化するまで、(政治資金)収支報告書に記載されていないことを知りませんでした」と釈明。その上で、「政治不信を招いたことについて、知らなかったとはいえ、幹部の1人として深くおわび申し上げます」と陳謝した。
また、2021年に会長に就いた安倍晋三元首相の意向を踏まえ、22年のキックバックは行わないとの話し合いが幹部間であったが、結果的にはキックバックが続いたようだと説明。これについても、「事務総長を退任したため、継続された経緯を含め、全く承知していない」と語った。
派閥からのキックバックは、自身の政治資金パーティーの収入として計上しており、「いわゆる裏金となっていたことは一切ない」と強調。「検察当局の捜査に協力する中で、寄付として記載すべきとの指摘を受け、これに沿って収支報告の訂正を行いました。忙しかったとはいえ、適切な指示をしておけば良かったと反省しており、監督責任を強く感じております」と話した。

◆9:20 還流廃止は安倍元首相の意向

西村氏は、自民党武藤容治衆院議員の質問に対し、2022年に派閥会長だった安倍晋三元首相が、パーティー券収入のキックバック(還流)の廃止を主張した経緯を明かした。
西村氏は、安倍元首相から2022年の4月、「現金での還付を行っているのを止めると言われた」と説明。「私もこれは止めようということで、幹部でその方針を決めまして、若手議員何人かの議員に手分けして電話もした。私自身も若手議員に電話をして止めるという方針を伝えた」という。
キックバックを止めた理由は「現金は不透明で疑念を生じかねないから」だったとした。
2022年7月に安倍元首相が亡くなった後、「ノルマのよりも多く売った議員がいたようでありまして、返してほしいという声が出てきた。それを受けて8月の上旬に幹部で議論をしたが、結局結論は出ずに、私は8月10日に経産大臣になりましたので事務総長を離れることになった」という。
西村氏は「その後、どういった経緯で現金での還付が継続されることになったのかその経緯は承知しておりません」と語った。

◆9:37 2022年4月に幹部が集まり廃止決定

立憲民主党枝野幸男衆院議員も、安倍派で還流廃止から復活に至る経緯を追及した。
西村氏は「安倍会長の元で、2022年4月上旬、当時の幹部が集まって方針を決めた」と発言。集まった幹部は、西村氏のほかに塩谷立氏、下村博文氏、世耕弘成氏や派閥の事務局長だったという。
2022年5月の派閥のパーティーを控えた4月、「還付は止めるという方針を決めて、私は若手議員中心だったと思いますけど連絡した」と説明。「その後、ノルマ以上に売った議員から、返してほしいという声があり、8月上旬に幹部で集まってどう対応するかと協議したが結論は出なかった」と述べた。

1月31日の会見で下村博文氏は… 安倍氏が還流廃止を提案した22年4月の協議には、下村氏と当時事務総長だった西村康稔経済産業相塩谷立文部科学相世耕弘成参院幹事長が出席。22年8月にも下村氏と西村、塩谷、世耕の3氏が再び対応を話し合ったが「(8月の)協議の中で(還流継続を)決めた事実はない」。

◆9:42 各議員のパーティーに上乗せ、西村氏提案

枝野氏は、西村氏が派閥からのキックバック分を自身の政治資金パーティーの収入に上乗せしていたことに関し、さらに追及した。
下村博文文部科学相が今年1月の記者会見で、2022年8月に行われた派閥幹部の協議の場で「ある人から、その還付(キックバック)については個人の資金集めパーティーに上乗せして、それで(政治資金)収支報告書で合法的な形で出すということもあるのではないかという案もあったと思う」と証言していると指摘し、「これ、西村さんですよね」と迫った。

西村氏は「還付は行わないという方針を維持しながらも、一方で返してほしいと(いう要望もある)。どう対応するかということで、いろんな意見が出された。その中でアイデアの一つとして、今後議員が開くパーティー券を清和会が購入するということはどうかという代替案が出た。私自身も、検討できるのではないかと発言した。この方策が実際に採用されたわけではないし、結果的に現金での還付が継続されたようだ」と説明。
枝野氏は「おかしいですね。下村さんは『個人の資金集めパーティーに上乗せして』という話をしている。上乗せして合法的なように見せるって、あなたがやっていることそのものじゃないですか」とたたみかけた。
これに対し、西村氏は「結果としてそのように見えるかもしれないが、私の会計責任者の秘書が、収入の一部として政治資金の収支(報告書)に載せていたことは承知していなかった」などと述べ、あくまでも個人パーティの収入に上乗せする方法は自身の発案ではないと否定した。
枝野氏が「現金で秘書が受け取っていたものを、西村さんの個人パーティーの売り上げに上乗せしていた。そんなことを秘書さんが勝手にできるんですか」と強い口調で問い質した。
西村氏は「秘書と何度も確認した。(キックバック分を)不記載にしたくないという思いがある中で、私のパーティーの収入に入れておかしくないと判断して、そのような処理をしていたということだ」と弁明。
さらに枝野氏が「派閥の側から(収支報告書に)記載しなくていいと言われたお金を、あなたのパーティー(収入)として計上すれば、精査されたらつじつまが合わなくなる。(西村氏に)相談すべきだと判断できない秘書を雇っていたのか」とたたみかけると、口を結んで枝野氏をじっと見つめていた西村氏は「経験がある秘書で、信頼していた」と話した。
枝野氏は「下村さんの発言と、西村さんの今の証言は全く食い違っている」「西村さんの証言だけでは、はいそうですかとは到底ならない」と批判し、下村氏の政倫審への出席や参考人招致を要求した。

◆10:06 「正直に申し上げている」

日本維新の会青柳仁士衆院議員は、安倍派の裏金還流の復活について「キックバックを復活させるのは、非常に大きな決断。こんな大きな決断を幹部に相談なく、事務局長だけで決めることは絶対にない」と疑念をぶつけた。
衆院政治倫理審査会で挙手する西村前経産相=1日午前(代表撮影)

衆院政治倫理審査会で挙手する西村前経産相=1日午前(代表撮影)

なぜ還流が復活したのかを問われた西村氏は眉間にしわを寄せながら、「幹部との間で、資金に関する協議にはいっさい関わっていませんので、知らないというのが正直なところです」とし、「今思えば、還付しない方針を徹底しておけばよかったと深く反省しています」と述べるにとどまった。
事務総長の職を離れた2022年8月直後、還流復活の結論が出たとの西村氏の説明に、青柳氏は「事務総長が変わった同じ月に結論が出た。客観的に見れば、(安倍派幹部の)4人で話し合って決めたとしか思えない」と迫った。
「説明責任を果たせているのか」と問われても、西村氏は「経緯は全く承知していない。全て正直に申し上げている」「どういう質問されても、その後の経緯については承知していない」と繰り返した。

◆10:20 森元首相の関与「聞いたことない」

共産党塩川鉄也氏は、安倍派のパーティー収入のキックバックが歴代会長と事務局長との間で長年慣行的に行われていたとする西村氏の弁明について、「事務総長が関わっていないとは、にわかに信じ難い。歴代会長に事実関係を確認しなかったのか」と尋ねた。西村氏は「亡くなられた方も多い。派閥として、そういったことは私の知る限りは今の時点では行っていないのではないか」と説明した。
この問題では、1998~2006年に派閥会長を務めた森喜朗元首相の指示があったかどうかも焦点の一つとなっている。

自民党の聞き取り調査の報告書(2月15日公表)では… 「安倍派で収支報告書に記載しない取り扱いが、いつどのように始まったかは判然としないものの、遅くとも10数年前から行われていた可能性が高い。場合によっては20年以上前から行われていたこともうかがわれる。二階派では少なくとも10年前から今の仕組みになっていた」と結論づけている。

塩川氏が「森元会長には確認はしないか」と迫ると、西村氏は「森元総理が関与していたという話は聞いたことがないので、確認していないが、もし疑念が生じるのであれば、(派閥の)幹部が確認しても口裏を合わせたのではないかと言われかねないので、第三者が確認するのがいいと感じている」と答えた。