政倫審開催へ(2024年2月25日)

政倫審を実態解明の第一歩に(2024年2月25日『日本経済新聞』ー「社説」)

衆院予算委理事会で政倫審日程などの協議に臨む与野党の理事ら(22日)=共同

 自民党派閥の資金問題をめぐり衆院政治倫理審査会が28、29両日にも開かれる。資金パーティー収入の還流や不正会計の広がりは政治への信頼を損なっている。政倫審の開催を第一歩として、裏金づくりの実態解明と再発防止に向けた議論を加速してほしい。

 安倍派と二階派の幹部5人が衆院政倫審に審査を申し出た。安倍派は座長だった塩谷立氏と事務総長経験者の松野博一西村康稔、高木毅各氏、二階派の事務総長だった武田良太氏が出席予定だ。

 政倫審は「政治とカネ」などの疑惑が浮上した国会議員から弁明を聴取し、質疑や審査を行う。衆院での開催は2009年以来となる。参院も政倫審を初めて開く方向で調整し、世耕弘成氏が出席する考えを示している。

 派閥の裏金事件をめぐり東京地検特捜部は国会議員3人と安倍、岸田、二階3派の会計責任者らを立件した。一方で刑事告発を受けた安倍派の幹部7人らの立件は見送った。政倫審では組織的な資金還流が始まった経緯の解明とともに、派閥幹部らの政治的、道義的な責任が焦点となる。

 裏金問題での自民党執行部の対応はことごとく後手に回った。自民党側は今回の政倫審を「原則非公開」のルールに沿って実施したい意向だ。審査を非公開とする理由は見いだせず、内容は全て公開すべきである。

 野党側は政治資金収支報告書の不記載が見つかった衆院議員51人、参院議員32人(自民党離党者を含む)の出席を求めている。

 過去5年間で巨額の不記載があった二階俊博元幹事長や萩生田光一政調会長をはじめ多くの議員が説明責任を果たすべきだ。疑惑が解消されない議員は、国政調査権に基づく参考人招致なども視野に入れる必要がある。

 「政治とカネ」の問題ばかりに今国会の時間や労力を費やすわけにはいかない。不正の再発防止に向けた法改正の議論を深めるためにも、まずは衆参の政倫審での真相究明と責任追及が重要となる。

政倫審開催へ 国民に対する説明尽くせ(2024年2月25日『産経新聞』-「主張」)

国会内で開かれた自民党役員会。同党は衆院政倫審への対応を迫られている

 自民党の派閥パーティー収入不記載事件を受けた衆院政治倫理審査会(政倫審)が28、29両日に開かれる見通しとなった。

 安倍派で座長を務めた塩谷立文部科学相、事務総長経験者の松野博一官房長官、高木毅前国対委員長西村康稔経済産業相二階派事務総長の武田良太総務相の計5人が出席する予定だ。

 与野党参院政倫審の開催でも調整を進めており、参院安倍派会長を務めてきた世耕弘成参院幹事長が出席する意向を示している。

 東京地検特捜部が強制捜査に着手した昨年12月19日から2カ月以上が経過している。まずは、これまで十分に説明責任を果たしてこなかったことに対し反省を求めたい。

 その上で政倫審では還流資金の政治資金収支報告書への不記載をいつ、だれがどのような理由で開始し、なぜやめられなかったのか、またその使途について明らかにせねばならない。

 安倍派に関しては、同派幹部が令和4年5月のパーティーに先立って協議し、派閥会長だった安倍晋三元首相の意向を踏まえて還流の停止を決めた。だが、安倍氏が死去した後、再び協議し還流を継続したという。参院選の年は、複数の参院議員にパーティー券の販売ノルマ分を含め全額を還流していたとされる。

 これらの経緯について安倍派関係者から語られていない。詳細を説明すべきだ。

 政倫審は、政治的道義的に責任があるかどうかを審査する機関である。特捜部の捜査と異なり、政治家としての倫理観が問われている。自身が立件されなかったからといって、「知らぬ存ぜぬ」は許されない。弁明に立つ議員は責任の取り方も示す必要がある。

 国民の疑問に答えることができなければ、出席議員も自民も信頼を取り戻すことはできない。その意味では当然公開で審査を行うべきだ。衆院政倫審に出席予定の5人は非公開の意向を示しているというが、理解に苦しむ。

自民は今後、関係議員の処分について検討に入る。岸田文雄首相(党総裁)は説明責任の果たし方などを踏まえて判断すると語っている。厳正に処分を行い、公党としてけじめをつけることが重要である。