◆「指示するのか、しないのか」
「きっぱりと総理が、完全公開でやれと指示したらどうか」
野田氏が迫ると、岸田首相は手元のペーパーに目を落としながら「傍聴を許さないとした上で、対象議員の意思を尊重する」との政倫審の規定を読み上げた。
岸田首相は「過去の実態を見ると対応はさまざま」とし、「国民に向けて説明するのは重要だが、国会で判断するもの」と正面から答えようとしない。
「指示するのか、しないのか」。野田氏が改めて尋ねた。
岸田首相は「指示という言葉の定義ですが…」と論点をずらし、「あらゆる場を通じて説明責任を果たすように働きかけていく」と述べるにとどまった。
裏金事件を受け、「国民の信頼回復のために、火の玉となって自民党の先頭に立ち、取り組んでいく」と語っていた岸田首相。「説明責任を果たす」と言いながら公開を指示するとも、しないとも語ろうとしない姿勢に、野田氏は「やる気がない」とばっさり。
◆「あなたが政治改革の障害だ」
その上で野田氏は、裏金事件の再発防止のため設置した自民党の政治刷新本部のトップに立つ岸田氏に対し、こう断じた。
「脱税議員は納税しようと指示できないなら、政治刷新本部長は辞めたほうがいい。あなたが政治改革の障害となっている」
◆自民党は「完全非公開」を提案
野田氏の質問後、国会では正午から与野党の幹事会が開かれ、政倫審開催の調整が行われた。
しかし岸田首相は「説明責任を果たす観点から最良の方法が採られることを期待している」と正面からの回答を避けた。
裏金の真相「なぜ聞かない」二階氏、萩生田氏、下村氏を名指しされ、岸田首相が認めた不十分さ(2024年2月26日『東京新聞』)
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた衆議院予算委員会の集中審議で26日、立憲民主党の奥野総一郎衆院議員は、二階俊博元幹事長ら議員3人の政治倫理審査会(政倫審)への出席か国会への参考人招致がなければ「予算を今国会で通過させることは困難だと言わざるをえません」と踏み込んだ。
この日の審議では、岸田文雄首相からも「(裏金議員を対象に2月に行った)聞き取り調査で実態が十分把握できたものではない」との発言が飛び出した。(デジタル編集部)
◆「大事な論点」に「聞いてない」
二階氏は、在任中に党から約50億円の政策活動費を受け取ったとされている。
萩生田氏は、裏金事件を受けた政治団体の収支報告書の訂正で、政治活動に関する支出の金額や年月日など30カ所以上に「不明」と書いた。
下村氏は、安倍派の事務総長を務めた経験がある。安倍派所属議員へのパーティー券の販売ノルマ超過分の還流については、安倍晋三元首相が2022年4月に還流の中止を提案した際、協議に出席していたと語っている。
奥野氏はこの日、岸田首相にこの3人への聞き取り状況を尋ねた。下村氏の証言については、「誰が還付をやめるのをやめたのかということについて、共謀が行われていたか大事な論点だが、下村さんにヒアリングで聞かれたか」と質問した。
岸田首相は「ご指摘の点について実態を確認したとは、私自身も聞いていない」と答えた。
奥野氏は「萩生田さんのお金の使い道も、二階さんのお金の使い道も、最も肝心な(安倍派から所属議員への)還付を止める決定を誰がひっくり返したのかも、ヒアリングの中で聞いていない」と追及。岸田首相に、政治倫理審査会や予算委員会への出席を促すよう繰り返し求めた。
◆森元首相にも「なぜ聞かない」
裏金議員へのヒアリング結果をまとめた報告書では、安倍派について「遅くとも十数年前から行われていた可能性が高い(場合によっては20年以上前から行われていたことも窺われる)」と指摘している。
岸田首相は「聞き取り調査だけで全てを把握できたわけではない」としつつも、「(議員らへの聞き取りの中で)森元総理の具体的な関与を指摘する発言はなかったことから、追加の調査は必要ない」と述べた。