能登地震2カ月に関する社(論)説・コラム(2024年3月1日)

【震災13年 相次ぐ自然災害】被災地の連携強めて(2024年3月1日『福島民報』-「論説」)


 東日本大震災東京電力福島第1原発事故から11日で13年になる。有事への備えは万全か。県、市町村をはじめ県民一人一人が改めて点検する必要がある。国内の災害で顕在化した課題には敏感に目を向け、防災と減災の不断の取り組みにつなげていきたい。

 

能登半島地震2ヵ月 古里に戻る手だて早急に(2024年3月1日『福井新聞』-「論説」)

 

能登半島地震の発生から2カ月となった。石川県によると、被災した市町では2月末時点で体育館や集会所といった「1次避難所」に約6500人が暮らしているほか、孤立集落の住民らを受け入れた被災地外のホテルや旅館などの「2次避難所」と2次避難所に移るまでの一時的な「1・5避難所」に計約4800人が身を寄せているという。

 今も1万1千人以上が避難生活を送る一方、仮設住宅の入居も始まった。民間住宅を行政が借り上げる「みなし仮設」は約2千戸が契約済みだが、2次避難所同様、被災地から距離があり、支援が届きにくい状況にある。

 同県は個々の被災状況や避難先、配慮が欠かせない持病などの情報を集めたデータベースを整備するという。きめ細かな支援のためにはこの土台づくりが重要になろう。

 発生直後に比べ寒さは幾分緩んだようだが、被災地では今週末に降雪予報も出され、厳しい寒さが続く。長い避難生活による疲労やストレスで体調を崩して亡くなる「災害関連死」の対策も引き続き求められる。

 2011年の東日本大震災や16年の熊本地震では関連死の約8割が3カ月以内に発生した経緯がある。避難所は無論、支援が滞りがちな自宅でも生じる可能性がある。在宅被災者の把握は市町により濃淡があるとされ、対策強化が必要だ。

 旅館などの2次避難所で暮らす人の間で、北陸新幹線の金沢―敦賀間開業が3月16日に迫り、観光客受け入れのため、移動を求められるのではないかといった不安や戸惑いが高まっているという。旅館などにはできる限り受け入れを延長してほしい。

 移動先の候補として仮設住宅などが示される中、土地の制約上、用意できる戸数を希望件数が大幅に上回っている。奥能登地方は住民の助け合い意識が強い地域であり、住民の孤独やコミュニティーの分断が危惧されるだけに、地元に近い場所に地域住民同士が入居できる仮設を多く確保してもらいたい。それは人口流出防止にもなるはずだ。

 石川県には市街地や集落の空き地に長屋型や一戸建ての木造仮設住宅を建てる構想がある。工期はプレハブ型よりかかるが、公営住宅への転用や払い下げも可能だ。古里に戻りたいが、自宅再建は厳しいという高齢者の希望に沿うのではないか。復興の担い手である住民に戻ってもらう手だてを早急に示す必要がある。

 そのためにも、がれきや土砂の撤去を急がねばならない。福井県からも大勢のボランティアが被災地支援に赴き、県はがれき処理にも対処する意向を伝えている。観光応援なども福井県民挙げて後押ししたい。

 

被災2カ月 インフラの復旧が急務だ(2024年3月1日『新潟日報』-「社説」)

 被災者が早く自宅に戻れるようにしたい。仮設住宅の建設も早めたい。そのためには上下水道や道路などインフラの復旧を急がねばならない。

 能登半島地震が発生してから1日で2カ月となった。石川県によると、亡くなった人は災害関連死の15人を含め241人、住宅被害は7万5421棟に上る。

 県内の1万1449人が避難生活を余儀なくされている。体育館や集会所などの1次避難所に6587人、2次避難の前に一時的に受け入れる1・5次避難所に129人、ホテルなどの2次避難所に4733人が身を寄せている。

 仮設住宅は県が2月末までに着工した3522戸のうち、302戸が完成したのにとどまる。

 地震発生直後は最大で約11万戸が断水した。取水施設や浄水場のほか、配水管も各地で損傷したため、今なお約1万8880戸で断水が続いている。

 水が使えなければ、被災者が避難所から自宅へ戻って生活をすることは困難だ。まとまった数のボランティアを受け入れることも容易ではない。

 県はボランティアに関し、水道や道路の復旧遅れなどを理由に、個別の被災地入りを控えるよう呼びかけている。

 しかし、被災者の生活再建にはボランティアの活動拡大が欠かせないはずだ。

 行政には、宿泊拠点を設置するなどの工夫をして、被災地に滞在できるような受け入れ態勢を整えてもらいたい。

 下水道被害も深刻だ。感染症など衛生環境の悪化が懸念される。能登半島の6市町は全体の3割の下水管が機能を回復していない。

 最大震度7の強い揺れに地盤の液状化が重なり、下水管が寸断されたとみられる。

 上水道と下水道の復旧をそろえないと、汚水があふれ出す恐れがある。上下水道の一体的な復旧を進めていく必要があるだろう。

 被災者がトイレ利用を控え、体調を崩さないかも心配だ。

 下水道を使えない地域では、仮設トイレや、水洗機能を備えたトイレトレーラーを置いている。

 全域で量、質ともに足りているのかが気になる。行政にはきめ細かな対応を求めたい。

 専門家は「三方を海に囲まれている能登半島の復興には道路復旧が不可欠だ」と指摘する。

 北陸地方整備局によると、半島を縦断する能越自動車道で178カ所、海岸部を結ぶ国道249号で231カ所の崩落や亀裂などが生じている。

 被災地支援で物資や資材を運ぶ幹線道路だ。緊急復旧は進んでいるが、輸送車や住民らが円滑に移動できるようさらに急ピッチで道路整備に努めてほしい。

 

能登半島地震から2カ月(2024年3月1日『宮崎日日新聞』-「くろしろ」)

 自宅に「日本の絶景」をテーマにした大型の写真カレンダーがある。6枚つづりで、きのう早々と1枚目(1、2月)を?がすと春の西都原の写真が現れて驚いた。一方、?がした写真をよく見てみると…。

 飾っていた2カ月間はさほど意識していなかったが、これがとても美しい。水平線から昇る朝日。穏やかな波。海の色は鮮やかなオレンジで水平線の付近は紫。沖の小島と鳥居が、逆光の効果でとても幻想的だ。撮影場所を見ると「恋路海岸(石川)」とあった。

 調べてみると、昔の悲恋の物語に由来する地名だという。石川県の観光サイトには「恋路海岸から見附(みつけ)島(珠洲市)までの3・5キロの海岸線は『えんむすビーチ』と呼ばれています」とあった。見附島といえば今回の能登半島地震によって一部が大きく崩落した島である。

 震災からきょうで2カ月。石川県内の小中学校で全面的に登校が再開されるなど、少しずつ前に進み始めている。石川県は震災を受けての観光支援「北陸応援割」を16日の宿泊分から始めると表明したが、恋路海岸のある能登町役場に話を聞くと、周辺は受け入れ態勢が十分に整っていないという。

 「恋」が付く地名は本県にもある。後鳥羽上皇がこの地より京の方角を望み都を恋いしのんだという、串間市の恋が浦だ。同じ石川県内とはいえ、避難先で地元を恋いしのんでいるであろう被災者はまだまだたくさんいる。この先も支援の手を緩めてはならない。

 

能登半島地震2カ月(2024年3月1日『しんぶん赤旗』-「主張」)

 

地域で住み続けられる支援を
 能登半島地震の発生から2カ月になりました。石川県では今も1万1000人以上が避難所で生活しています。ほかに行政がつかんでいない避難者は2月半ば時点で約1万人と推定されます。住宅被害は7万4000戸以上に上ります。被災者が望んでいるのは、地元で暮らし続けることです。そのためには住まいと生業(なりわい)の再建が死活的に重要です。政府が責任を持ち、従来の枠組みにとらわれずに支援を拡充する必要があります。

住宅再建補助引き上げよ
 仮設住宅は、7000戸以上の入居希望に対し、3月末までの完成は千数百戸とみられ、遅れが深刻です。避難生活を長引かせ、他市町、他県への流出が増え、地域が丸ごと衰退しかねないと懸念されています。迅速な供給に全力をあげることが求められます。

 住宅の再建支援に抜本的な拡充が必要です。被災者生活再建支援法の支援金は最大でも全壊の場合の300万円です。中規模半壊では100万円で、損壊の割合がそれより低い被害は対象外です。再建にはまったく足りません。

 資材価格が高騰し、住宅価格が上がっています。実際に住宅を建てられるよう、支援金の額を600万円以上に引き上げることが急務です。中規模半壊に至らない住宅にも支援を広げるべきです。

 政府は、最大300万円の上乗せ支援を発表しました。被災者生活再建支援法の既存の給付と合わせて最大600万円の支援を受けることができます。しかし、対象は輪島市珠洲(すず)市など6市町に限られ、500戸を超える全半壊が報告されている、羽咋(はくい)市、中能登町などは除かれています。住民税非課税世帯、高齢者世帯といった条件も付いています。

 上乗せを打ち出すのは、現行制度が不十分だからです。一時的な追加支援にとどめたり、年齢や所得の条件をつけたりする理由はありません。6市町以外や石川県以外でも住宅被害は起きており、自治体で線引きすることは不適切です。あれこれ制限をつけずに被害全体を対象とすべきです。

 被災者生活再建支援法は、阪神・淡路大震災後、公的補償を求める被災者の運動を受けて1998年に制定されました。被災の実情に応じて改正するのは当然です。

 中小企業・小規模事業者の施設・設備の復旧を支援する生業再建支援補助金は、補助率が必要資金の4分の3です。残る4分の1は自己負担または借り入れで調達するしかなく、「無理」という声が上がっています。上限5億円の定額補助もありますが、過去、災害に遭った「多重被災事業者」に限られています。

事業を再開できる制度に
 過去の地震被害に加え、コロナ、物価高で多くの事業者が疲弊し、新たな融資を受けることは困難です。業者が求めているのは、実際に事業を再開できる支援です。

 申請手続きの煩雑さも指摘されています。津波や火事で事業所ごと失った業者に実績の完全な証拠を求めるのは、申請を拒むに等しいことです。実情を考えた手続きにすべきです。

 農漁業では、農地や漁港が大きな打撃を受けました。復旧を急ぐとともに、営農、出漁できない農漁民に本格的な支援が不可欠です。

 人が戻ってこその復興です。政治の役割が問われています。