コンビニの防犯 盲点なかったか検証を(2024年3月1日『北海道新聞』-「社説」)

 札幌市北区コンビニエンスストアで、店員が刃物で刺される事件が起きた。
 運営会社の社員が死亡し、パート従業員2人が負傷した。
 道警は、店近くの路上で凶器とみられる包丁を持っていた男を殺人未遂の疑いで現行犯逮捕した。
 容疑者はパート従業員2人を相次いで襲い、商品などを保管するバックヤードで社員を刺したとみられている。
 深夜や早朝も営業し、気軽にさまざまな買い物ができるのがコンビニの良さだろう。
 生活に密着した商業施設でいきなり刃物を振るい、次々と殺傷に及んだのなら、地域住民の日常の安心をも大きく脅かす凶行と言うべきだ。決して許されない。
 被害者には複数の刺し傷があった。現場では複数の刃物が押収されたという。
 強い殺意がうかがえる。
 動機は何なのか。道警は解明を慎重に進めてもらいたい。
 コンビニ業界では、強盗や万引などの防犯訓練や通報装置設置といった対策は講じられてきた。
 今回の事件はレジに荒らされた形跡はなく、金目当てではない可能性がある。想定を広げ、防犯上の盲点がないかについて検証し備える必要がある。
 万が一、店員や客が直接危害を加えられそうになった場合、どう逃げればよいか。内側から施錠ができ、安全を確保できるスペースが店内に確保されているか―。
 こうした点を確認したい。
 店員に対しては自分の身を守ることを第一に考えるよう、改めて徹底する必要があるだろう。
 警察は専門的な見地からの助言を十分に行うべきだ。
 24時間営業の店舗では、深夜や早朝は少ない店員で対応するケースも多い。店内には商品や現金もある。犯行の対象になりやすい条件がそろっている。
 殺傷事件の翌日には札幌市厚別区のコンビニに男が押し入り、現金を奪う強盗事件が起きた。
 コンビニの店員は社会的に重要な業務を担いつつリスクにも接している。その命を守る責務をコンビニ各社は忘れてはならない。
 コンビニは近年、声かけによる特殊詐欺被害の防止や、不審者や暴力などから逃れて駆け込んできた女性や子どもの保護など幅広い役割を負っている。
 だからこそ、店ごとに町内会などとの連携を日ごろから深め、地域ぐるみで防犯に取り組むことも検討してはどうか。