自民党派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を扱った29日の衆院政治倫理審査会には、野党側が出席を求めた二階俊博元幹事長ではなく、二階氏が率いる二階派(志帥会)事務総長の武田良太元総務相が出席した。事件で二階派は元会計責任者が刑事処分されたほか、二階氏は多額の政治資金収支報告書の訂正に及んだ。側近の武田氏が身をていして領袖(りょうしゅう)を追及から守った形だが、派内には冷ややかな声もある。
「二階氏は紛れもなく派閥の象徴だ。しかし、事案が発生して数々の作業に携わったのは私であり、一番説明責任がつく」
武田氏は政倫審で、二階氏ではなく自身が出席した理由をこう述べた。
二階派は派閥の収支報告書に過去5年で計2億円超の不記載があったとして、元事務局長が在宅起訴された。また、二階氏の関係団体でも約3千万円超の不記載があったとして、担当秘書が略式起訴された。
野党は衆院予算委員会などで二階氏に追及の矛先を向けており、二階氏側も指摘された書籍代約3500万円の内訳を公表するなど疑惑の払拭に努める場面もあった。
二階氏自身は野党にも政治資金問題があることを念頭に「何で俺が出なきゃならん。俺が出るなら野党も出ろ」と周囲に漏らす。ただ、「売られたけんかを買いがちな性分」(二階派議員)の二階氏が出席すれば、野党のペースに乗せられる懸念があり、最終的に武田氏が政倫審への〝代理出席〟を決めた。
政倫審の出席者を巡り安倍派(清和政策研究会)の対応が混迷した一方で二階派は足並みをそろえて「ボス」を守り、解散決定後も自慢の結束力を見せつけた。とはいえ、武田氏を含む二階氏以外の派閥幹部も収支報告書を訂正した経緯があり、派内にも「誰かが責任を取るのは当然だ」と突き放す声がある。(市岡豊大)