そもそも「お呼びじゃない」岸田首相 政倫審出席に批判が続々…そのワケは 「幕引き狙い?」野党は皮肉(2024年2月28日『東京新聞』)

直前に開催が見送られるなど迷走が続いた衆院政治倫理審査会(政倫審)。28日朝になって突然、岸田文雄首相が出席を表明すると、X(旧Twitter)には驚きの声とともに「呼んでいない」「意味がない」などと批判的なコメントが相次いだ。(デジタル編集部・福岡範行)

◆首相に質疑する機会は政倫審じゃなくてもいい

野党が衆院の政倫審への出席を求めているのは、裏金が発覚した現職の衆院議員51人。そのうち自民党が応じたのは安倍派、二階派の幹部5人だけ。二階俊博元幹事長、萩生田光一政調会長下村博文政調会長は、出席する予定がないままだ。
衆院政倫審出席の意向について、記者団の取材に応じる岸田首相=首相官邸で

衆院政倫審出席の意向について、記者団の取材に応じる岸田首相=首相官邸

岸田首相については、そもそも野党は出席を求めてこなかった。
立憲民主党小西洋之参院議員は、Xで「政倫審は当事者の疑惑を晴らす場で、岸田総理は裏金に関与していないのであれば出席資格がない」と投稿。政倫審への首相出席を一蹴した。
説明責任に後ろ向きな自民議員たちがいる状況から、日本維新の会の音喜多駿政調会長は「学級崩壊状態の党内へのプレッシャーをかけることが目的か」と読み解いたものの、岸田首相の出席自体は「予算委員会でも質疑できるので実質的な意味はほぼない」と言い切った。

◆党総裁として指示しないのか

野党がこれまで再三にわたって岸田首相に求めていたのは、首相自身の出席ではない。党総裁として、裏金事件に深く関与した当事者らの出席や完全公開での政倫審開催を指示することだった。
26日の衆院予算委では、立憲民主党野田佳彦元首相から「きっぱりと総理が、完全公開でやれと指示したらどうか」と問われた際、岸田首相は「国民に向けて説明するのは重要だが、国会で判断するもの」と正面から答えなかった。
26日、衆院予算委で質問する立憲民主党の野田佳彦元首相

26日、衆院予算委で質問する立憲民主党野田佳彦元首相

「指示するのか、しないのか」。
野田氏が改めて尋ねても、岸田首相は「指示という言葉の定義ですが…」と論点をずらし、「あらゆる場を通じて説明責任を果たすように働きかけていく」と述べるにとどまった。
その2日後に一転、自らの出席を表明した首相。Xでは「ちがうだろ 岸田さんは結構ですので、裏金議員に公開で参加を指示してください」との投稿もあった。
立民の福山哲郎参院議員も、Xで「いつもだがピントがずれている。岸田総理が、衆院予算委のように政倫審で空疎な答弁を繰り返しても意味がありません。安倍派5人衆をはじめ政倫審に出席するべきは裏金問題の当事者です。当事者に公開の場に出るように指示するのが総理の責任です」と訴えた。
立民の小沢一郎事務所のXアカウントは、首相の心境を「党の誰も総裁である自分の言うことを聞いてくれないんで、ひとまず私が出ますんで、それでもう勘弁してもらって、この問題を早く幕引きできませんかねえ?」と推測する投稿で皮肉った。

◆岸田首相「志のある議員に期待」

岸田首相は28日午前、記者団に自らの出席意向を語った際、「政治の信頼回復に向けて、志のある議員に政倫審をはじめ、あらゆる場において説明責任を果たしてもらうことを期待している」と強調し、「今の状況のままではますます政治に対する信頼を損ねる、不信が深刻になると強い危機感を感じていた」と説明した。
Xでは「どうせ今までの答弁と同じ」との冷ややかな声も。他の自民議員の出席表明が続くことに期待する声や、政倫審ではなくうそをつけば偽証罪に問われる国会への証人喚問をすべきだという意見もあった。
衆院政倫審は、29日と3月1日に開くことを28日の幹事会で決めた。報道機関の取材を認め、全面公開される。
29日には岸田首相と二階派武田良太総務相が、3月1日には安倍派の塩谷立文部科学相西村康稔経済産業相松野博一官房長官、高木毅前国対委員長が出席して審査を行う予定。
 
現職首相として初めて「政倫審」出席へ 岸田氏自ら「裏金」説明する意向を表明「マスコミオープンの下で」
 
 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた衆院政治倫理審査会(政倫審)を巡り、岸田文雄首相は28日午前、官邸で記者団に「自民党総裁として政倫審に自ら出席し、マスコミオープンの下で説明責任を果たさせていただきたいと考えている」と述べ、出席する意向を表明した。現職の首相が衆院政倫審に出席するのは初めてとなる。
衆院政倫審出席の意向について、記者団の取材に応じる岸田首相=28日午前、首相官邸(朝倉豊撮影)

衆院政倫審出席の意向について、記者団の取材に応じる岸田首相=28日午前、首相官邸(朝倉豊撮影)

 首相は「政治の信頼回復に向けて、志のある議員に政倫審をはじめ、あらゆる場において説明責任を果たしてもらうことを期待している」と強調。「今の状況のままではますます政治に対する信頼を損ねる、不信が深刻になると強い危機感を感じていた」と語った。
 衆院政倫審は当初、安倍派事務総長だった西村康稔経済産業相塩谷立文部科学相松野博一官房長官、高木毅前国会対策委員長二階派事務総長を務めた武田良太総務相が出席して28日と29日に開催する方向で調整していた。自民側は「完全非公開」で行うよう主張し、西村氏と武田氏の審査を28日に先行して実施する方針を示したが、公開方法を巡って野党側と折り合いが付かず、開催が見送られていた。(大杉はるか)