洋の東西を問わず、古代の権力者は時間も支配した…(2024年2月29日『毎日新聞』-「余録」)

今年は4年に1度のうるう年。29日まである2月のカレンダー=大阪市都島区で、小関勉撮影拡大
今年は4年に1度のうるう年。29日まである2月のカレンダー=大阪市都島区で、小関勉撮影
ユリウス暦のクリスマスイブ礼拝で祈りをささげる、ウクライナからの避難民ら=東京都港区で2023年1月6日、宮武祐希撮影拡大
ユリウス暦のクリスマスイブ礼拝で祈りをささげる、ウクライナからの避難民ら=東京都港区で2023年1月6日、宮武祐希撮影

 洋の東西を問わず、古代の権力者は時間も支配した。中国発祥の旧暦は太陽の運行とのズレを調整するため、閏(うるう)月を置いた。閏の字は門の中に王。月初めに祖先を祭る宗(そう)廟(びょう)にいた王が閏月は宮殿で過ごしたとされる

閏年を採用したのが古代ローマ独裁官ユリウス・カエサル(シーザー)だ。太陽年に近づけたものの128年に1日の誤差があり、後には「春分」に真東から太陽が昇らなくなった。カトリック教会は16世紀にグレゴリオ暦(西暦)に改暦した

▲対立する東方正教会ユリウス暦を守った。現在の西暦とのズレは13日。信徒の多いロシアは1月7日にクリスマスを祝う。実はギリシャなど多くの正教会は100年前から修正ユリウス暦を用い、西暦と差はない

▲ロシアに侵攻されたウクライナ正教会も昨年から修正暦に変えた。ロシアの影響を消そうとクリスマスの祝日を12月25日にしたゼレンスキー政権と同一歩調を取った

▲今日は4年に1度の2月29日。といっても19回先の2100年は平年である。グレゴリオ暦は100で割り切れ、400では割り切れない年を閏年にしないルールで誤差を約2600年に1日に縮めた

▲近代以降、複雑でキリスト教色が濃い西暦の改暦案が検討されてきた。年に1日か2日の曜日のない「ワールドデー」を設けて毎年の曜日を固定し、同じカレンダーが何度も使える「世界暦」も考案された。分断された今の世界では望み薄だが、各国の総意で改暦が実現する未来が来ないものか。