県立病院の赤字 医療水準低下は避けねば(2024年2月28日『新潟日報』-「社説」)

 慢性的な赤字解消に向けた経営改革は必要だが、医療サービスの低下は避けねばならない。地域医療の中で担う県立病院の役割について協議を重ね、民間医療機関などとの連携強化を求めたい。

 県病院局は県立13病院の2024年度病院事業会計予算案を発表し、純損益が過去最大の43億円の赤字となる見通しを示した。

 当初予算案での赤字は9年連続で、前年度より赤字幅は28億円拡大した。県は一般会計から毎年度100億円以上を繰り出して支え、24年度は146億円に達する。

 県立病院事業は危機的状況に陥っている。運転資金に当たる内部留保資金は、25年度末にも初めて枯渇する事態が予想される。

 過去に重ねた膨大な借金の返済とともに、県立病院の赤字は県財政の悪化を招く「二つの洪水」と言われてきた。

 住民が安心して暮らす上で必要な地域医療の拠点を守るため、県と各病院は速やかに経営改革を進めなくてはならない。

 内部留保の枯渇を避けようと、県病院局は改革推進チームを組織する。中長期的な収支改善も図る。24年度前半までに改革の方向性を定めるとしている。

 各病院はこれまでも一連の改革を進め、23年度までの5年間で累計117億円の収支改善を見込むなど成果を上げてきた。

 経営危機が一気に表面化したのは、新型コロナウイルス流行以降の受診控えが定着し、5類移行でウイルス関係の国の補助金もなくなったためだ。

 県立病院の入院、外来を合わせた延べ患者数は24年度に160万人を見込む。感染禍前の19年度当初より37万人も減る計算だ。今後は人口減も拍車をかけるだろう。

 さらに人件費が増加し、物価高の影響で医療資機材が高騰している。労務単価の上昇で外部への業務委託費も膨らんだ。

 入院診療単価や病床利用率の向上などで収益を上げていく必要がある。人件費や材料費などの適正化にも取り組まねばならない。

 県は3月中に県立病院の機能などを明確にした経営強化プランを策定する。案では、21年度に策定したグランドデザイン(全体構想)を踏まえ、7医療圏における病院の役割をより鮮明にした。

 指定管理者制度に移行する加茂と吉田(燕市)の両病院を除き、11病院の経営改善の方向性や指標などを示した。27年度までの黒字化を目指す。

 医師はじめ医療従事者の働き方改革、オンライン診療などのデジタル化も進める。高度な医療の提供に欠かせない対応だろう。

 県立病院にはへき地医療や不採算部門など、民間には担えない機能を持つことへの期待もある。医師が不足する地域で、持続可能な医療サービスを提供する方法を探ってもらいたい。