蛍光灯(2024年2月28日『新潟日報』-「日報抄」)

 家から漏れる光は日本では白っぽく、海外では赤みがかっていることが多いという。日本人は白い光が好みのようで、光源は昼白色の蛍光灯が主流である

▼なぜなのか。「高温多湿の日本では空気中の水蒸気によって景色が白っぽく映るので、照明も同様の見え方が求められる」とか「日本の家は開放的な造りで光を採り入れやすかったため、光を希求するようになり、涼しげにも見える」とか、いくつかの説があるようだ(日刊工業新聞社「照明の科学」)

▼日本は世界有数の蛍光灯大国だった。「だった」と過去形にしたのは、発光ダイオード(LED)照明への切り替えが進んでいるためだ。さらに、直管蛍光灯の製造と輸出入が2027年末までに禁止されることになった

▼蛍光灯には水銀が含まれており、水俣病の原因となった水銀を包括的に規制する「水銀に関する水俣条約」の締約国会議で合意された。25年末での禁止が既に決まっている電球形蛍光灯と合わせ、一般用の蛍光灯の製造が終わることになる

▼28年以降も今ある蛍光灯を使ったり、在庫品を販売したりすることはできる。そう慌てる必要はなさそうだが、いずれ蛍光灯は姿を消すことになる。もっとも、LED照明の売れ筋も蛍光灯色のようだ。私たちの「白い光好き」は変わらないのだろう

▼少雪の今冬だが、このところは寒気に包まれ雪化粧した所もあった。窓から漏れる白い明かりが庭の雪を照らしだす。蛍光灯がなくなっても、続いていく光景に違いない。