小金井市の保育園廃止条例は「無効」…でも出口がまだ見えない事情 専決処分は「違法」と異例の判決(2024年2月23日『東京新聞』)

 東京都小金井市が市議会の議決を経ずに市立保育園2園を廃止するための条例改正を専決処分したのは違法だとして、入園を認められなかった子どもの母親(31)が入園不許可処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決で、東京地裁は22日、条例改正は無効だとした上で、廃園を理由に入園を認めなかった処分を取り消し、市に慰謝料10万円の支払いを命じた。(岡本太)

◆前市長の専決処分は違法と判断

 原告側弁護団によると、専決処分による条例改正を無効にまで踏み込んだ判決は珍しいという。保護者の思いに寄り添った判断となった。
 岡田幸人裁判長は、保育園廃止条例の専決処分について「建物の老朽化が進んでいたなどの事情があるとしても、緊急性が客観的に高かったとまでは言えない」と指摘。地方自治法の定める専決処分の要件を満たさないとして違法と判断し、条例改正は無効と結論付けた。原告の母親に対しては「(次男を)兄とともに通園させ復職するという希望が絶たれ、憤りや悲しみにより心を痛めた」と、市に慰謝料の支払いを命じた。
判決について話す弁護団と支援者

判決について話す弁護団と支援者

 判決後、会見予定だった母親は子どもの病気で欠席し、「気持ちが伝わりほっとしている。保育園に行けるよと次男に伝えたら笑顔になった」とメッセージを寄せた。小金井市の白井亨市長は「判決内容を精査し、今後の対応を検討したい」とコメントした。
 この問題を巡っては2022年9月、西岡真一郎前市長が市内5園のうち2園を廃園にする条例改正案を市議会に提出。市議会が継続審議としたが、前市長が専決処分で条例を改正。そのため、新規入園の募集を段階的になくしてきた。

 専決処分 首長が、議会の議決なしに予算や条例を制定する手法。議会を招集するための時間的な余裕がないことが明らかな場合、議会が議決すべきことを議決しない場合、案件が軽微な場合の手段として、地方自治法に定められている。過去には、首長が専決処分を乱発し、問題化した例がある。

◆改正前の状態に戻せと言われても…すでに保育士は削減

 東京都小金井市が決定した市立保育園2園の廃止に東京地裁が22日、待ったをかけた。2園は問題となった2022年の条例改正で、既に昨年春から段階的に園児の募集が停止されているが、今回の判決が確定した場合は、両園の定員は改正前の状態に戻ることになり、市は園児の受け入れ再開など対応を迫られることになる。
 2園は「さくら保育園」と「くりのみ保育園」。条例改正を受けて23年春、両園とも0歳児の園児募集を停止。今春の入園に向けては、0歳児と1歳児の募集を止めている。
 判決は、専決処分を違法とした上で、条例改正自体も無効と判断しており、判決が確定すれば、市の条例は改正前の状態に戻る。原告の母親に対する入園不許可処分も取り消されており、市は改正前の状態で、改めて入園を許可するか決定する必要がある。
 ただ、2園は既に廃止を前提にした保育士の体制などを取っており、実際にすぐに募集を再開できるかは分からない。定員を戻した上で、市の裁量で募集を絞ることなども考えられる。
 また、市議会は22年12月、改正された条例を元に戻す条例案を議論が煮詰まっていないなどと反対多数で否決している。廃園に賛同する議員も多く、市が再度、廃園のための条例改正案を提出すれば可決する可能性もある。