遺族側が会見 “宝塚歌劇団側 多くがパワハラに該当と認める(2024年2月27日『NHKニュース』)

宝塚歌劇団に所属する25歳の劇団員が死亡した問題で、遺族側の弁護士が記者会見を開き、遺族側が主張する上級生などからの15件のパワハラについて、歌劇団側がこのうちの多くがパワハラに該当すると認めたことを明らかにしました。一方、それぞれの主張にはまだへだたりがあり、今後も合意に向けて交渉を続けるとしています。

去年9月、宝塚歌劇団宙組に所属していた25歳の劇団員が兵庫県宝塚市で死亡したことについて、歌劇団は去年、長時間の活動などで強い心理的負荷がかかっていた可能性は否定できないとする一方、いじめやパワハラは確認できなかったとする調査報告書の内容を公表しました。
これに対し、遺族側は「パワハラが否定されたままで合意解決することはありえない」として、過重労働やパワハラを認めたうえで謝罪と賠償を行うよう改めて求めていて、それぞれの代理人がこれまで4回にわたって面談し交渉を続けています。
そして27日、遺族側の代理人の弁護士が都内で記者会見を開き、交渉の現状について説明しました。
それによりますと、遺族側が劇団幹部や上級生からのパワハラにあたる行為が15件あったと主張しているのに対して、歌劇団側がことし1月24日付けの書面で、このうちの多くがパワハラに該当し、劇団員に多大な心理的負荷を与えたことを認めたということです。
ただ、歌劇団側は具体的にどの行為についてパワハラと認めるかは現時点で明らかにしていないということです。
また、合意した場合の公表のしかたなどをめぐって、歌劇団側とは現在も主張にへだたりがあるということで、遺族側は3月前半に5回目の面談を行うとしています。

これまでの経緯

宝塚歌劇団宙組に所属していた25歳の劇団員は入団7年目の去年9月、兵庫県宝塚市で死亡しているのが見つかりました。
遺族側の弁護士は記者会見を開き、長時間の業務と上級生からのハラスメントが原因だったとして、劇団に対して謝罪と賠償を求めました。
宝塚歌劇団は外部の弁護士による調査チームを設置し、宙組に所属する劇団員らから聞き取りを行うなどして調査を進めます。
そして、去年11月の記者会見で、いじめやパワハラは確認できなかったとする一方、長時間の活動などで強い心理的負荷がかかっていた可能性は否定できないとする調査報告書の内容を公表しました。
会見で当時の木場理事長は「健康面などの管理をもっとすべきだった。安全配慮義務を十分に果たしていなかったと深く反省している」と述べ、去年12月1日付けで理事長を辞任しました。
これに対し、遺族側は「パワハラが否定されたままで合意解決することはありえない」として、調査報告書の問題点を指摘した意見書を歌劇団側に提出します。
去年12月の会見で、遺族側の弁護士は、劇団員が額にヘアアイロンを押しつけられた際のやけどの痕だとする写真や、家族とのLINEのやり取りなどを公表し、パワハラにあたる行為は合わせて15に上るとしたうえで、歌劇団側に対し、こうした行為などを認めて謝罪と補償を行うよう改めて求めたことを明らかにしました。
こうした中、遺族側の弁護士と歌劇団側の代理人はこれまで4回にわたって面談を行い、合意による解決に向けた協議を進めてきました。
面談の中で、歌劇団側は意見書の内容を踏まえて、改めて事実関係の精査などを行うとしたうえで「ご遺族のお気持ちやお考えを真摯(しんし)に受け止め、誠実に協議してまいりたい」とするコメントを発表しました。
また、遺族側も2月1日、歌劇団側が従来の見解を変更し「遺族側の意見に相当程度配慮した内容が述べられた」と明らかにしています。
一方、遺族側は「現時点でも歌劇団側と遺族側の見解には一致しない点が相当程度存在している」として、今後も交渉を続ける考えを示していました。

“スケジュール見直しと組織風土の改善に取り組む”

今回の問題を受けて、宝塚歌劇団は劇団員の負担を減らすため、過密な公演スケジュールを見直すとともに、組織風土の改善に取り組むとしています。
このうち、公演スケジュールについては1月から見直しを進めていて、
▽1週間当たりの公演回数を10回から9回に減らしたほか、
▽ことし3月までの「新人公演」については、本拠地の宝塚大劇場での実施を取りやめ、東京宝塚劇場だけで行っています。
また、宝塚大劇場
▽ことし4月に予定されていた「宝塚歌劇110周年記念式典」
▽6月に予定されていた「タカラヅカスペシャル2024」
それに、大阪城ホール
▽10月に予定されていた「宝塚歌劇110周年記念大運動会」についても中止が決まっています。
また、歌劇団を運営する阪急電鉄などは、組織風土の改善に向けて外部の専門家からなる委員会を立ち上げることを検討しています。
この中では、歌劇団の厳しい上下関係や組独自のルールのあり方などを検証し、時代に合わないものについては見直しを進める考えです。
また、歌劇団は劇団員向けの外部の相談窓口を新たに設けたほか、阪急電鉄などと連携して人事や労務面も含めたチェック体制の整備について検討を進めています。

労働基準監督署が立ち入り調査

また、この問題をめぐっては、西宮労働基準監督署が去年11月以降、労働基準法に基づく歌劇団への立ち入り調査を行っています。
歌劇団によりますと、担当者が聞き取りを受けたほか、関連する資料を提出したということです。
労働基準監督署は劇団員の活動の実態などを詳しく調べ、法令違反がなかったかどうかなどについて確認を進めているものとみられます。

 宝塚歌劇団 運営の親会社 角和夫会長が理事退任で最終調整(2024年2月27日『NHKニュース』)

 

去年9月、宝塚歌劇団宙組に所属していた25歳の劇団員が兵庫県宝塚市で死亡しているのが見つかりました。

歌劇団は、去年11月、長時間の活動などで強い心理的負荷がかかっていた可能性は否定できないとする一方、いじめやパワハラは確認できなかったとする調査報告書の内容を公表しましたが、遺族側の代理人弁護士は上級生らからのパワハラなどがあったと主張していて、両者の間で協議が続いています。
こうした中、歌劇団を運営する阪急電鉄の親会社、阪急阪神ホールディングスの角和夫 会長が歌劇団の理事を退任する方向で最終的な調整を進めていることが関係者への取材で分かりました。
理事会は歌劇団の役職者や演出家ら10人で構成され、運営方針などを決めていて、角氏は、2014年3月から10年にわたって理事を務めてきました。
角氏は去年12月、劇団員を養成する宝塚音楽学校の理事長を退任していて、近く、学校の理事についても退任する見通しです。
歌劇団側は、組織の管理体制にも問題があったことを遺族側に対して認める方針で、角氏は、その責任を取る意向だということです。
これによって角氏は歌劇団の運営から退く形ですが、遺族側への対応や歌劇団の組織風土の改善などには引き続き関わっていくとみられます。