宝塚歌劇団の宙組に所属する当時25歳の女性が自宅マンションの敷地内で死亡しているのが見つかった問題で、女性の遺族側の弁護士が27日に東京都内で記者会見を開き、現在も歌劇団に所属する女性の妹のコメントを読み上げ、「劇団は姉の死を軽視している。姉の命の重さを何だと思っているのか。実際は遺族に誠意をもって対応しているとは思えない」と訴えました。
妹は、「劇団員は『パワハラは一切おこなわない』という誓約書にサインしていますが、それにもかかわらず、歌劇団は日常的にパワハラをしている人が当たり前にいる世界。その世界に今まで在籍してきた私からしても、姉が受けたパワハラの内容はそんなレベルとは比べ物にならない、悪質で強烈にひどい行為」と指摘しました。
その上で「劇団は今に至ってもなお、パワハラを行った者の言い分のみを聞き、第三者の証言を無視している。公平な立場で事実に向き合うべき。スケジュール改革などに取り組んでいるような発表をしているが、問題を曖昧にしているとしか思えない」と劇団側の姿勢を批判しました。
■「劇団幹部や上級生の行為の多くがパワハラに該当」と見解も…遺族との間に「今も相当程度の開き」
宝塚歌劇団の宙組に所属する25歳の女性が自宅マンションの敷地内で死亡しているのがみつかった問題をめぐっては、女性は、下級生の“まとめ役”を務める中で長時間にわたる残業をしていた上、上級生からヘアアイロンを押し当てられてやけどを負ったり、「下級生の失敗は、すべてあんたのせいや」「ウソつき野郎」などと言われたりしたことが、遺族の代理人弁護士を通じて明かされていました。
劇団が去年11月に公表した調査結果では、死亡した女性に「強い心理的負荷がかかった可能性が高い」とする一方、「いじめやパワハラ」は確認できなかったと結論づけました。これに対し遺族側は、「パワハラが否定されたままで、合意解決することはありえない」と批判。12月には、「上級生がヘアアイロンでヤケドを負わせた」「組の幹部が他の劇団員の面前で大声で叱責した」など15のパワハラ行為があったと改めて主張していました。
27日に記者会見した遺族の代理人は、劇団側とこれまで4回の交渉を行い、劇団側が1月の3回目の交渉で、「劇団幹部や上級生の行為の多くがハラスメントに該当する」との見解を示したことを明らかにしました。一方で、両者の間では謝罪文の内容や公表の方法などについて合意には至っておらず、「(劇団と遺族側の認識の差が)今も相当程度の開きがある」と説明しました。
■代読された妹のコメント(全文)
訴え 妹(宝塚歌劇団現役団員) 私は遺族として、大切な姉の為、今、宝塚歌劇団に在団している者として想いを述べます。いくら指導という言葉に置き換えようとしても、置き換えられない行為。それがパワハラです。劇団員は宝塚歌劇団が作成した『パワーハラスメントは一切行わない』という誓約書にサインしています。それにもかかわらず、宝塚歌劇団は、日常的にパワハラをしている人が当たり前にいる世界です。その世界に今まで在籍してきた私から見ても、姉が受けたパワハラの内容は、そんなレベルとは比べものにならない、悪質で強烈に酷い行為です。厚生労働省のパワハラの定義を見れば、姉が受けた行為は、パワハラ以外の何ものでもありません。宝塚は治外法権の場所ではありません。宝塚だから許される事など一つもないのです。
劇団は今に至ってもなお、パワハラを行った者の言い分のみを聞き、第三者の証言を無視しているのは納得がいきません。劇団は、生徒を守ることを大義名分のようにして、パワハラを行った者を擁護していますが、それならば、目撃したパワハラを証言してくれた方々も、姉も同じ生徒ではないのですか。そもそも『生徒』という言葉であいまいにしていますが、パワハラを行った者は、れっきとした社会人であり、宝塚歌劇団は一つの企業です。企業として、公平な立場で事実に向き合うべきです。
スケジュール改革や、各種改善策に取り組んでいるような発表をしていますが、姉の死を軽視し、問題を曖昧化しているとしか思えません。これ以上、姉と、私たち遺族を苦しめないでください。姉は体調を崩している訳でも、入院している訳でもありません。二度と帰ってきません。姉の命の重さを何だと思っているのでしょうか。劇団は、「誠意を持って」「真摯に」という言葉を繰り返して、世間にアピールしていますが、実際には、現在も遺族に誠意を持って対応しているとは思えません。これ以上、無駄に時間を引きのばさないで下さい。大切な姉の命に向き合って下さい。