「夫婦別姓、今度こそ認めて」さらに12人が国を一斉提訴へ 3月8日の「国際女性デー」に(2024年2月22日『東京新聞』)

 夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定は憲法違反だとして、法律婚事実婚をしている30~60代の男女計12人が、夫婦ともに結婚前の姓のまま結婚できることの確認や、一人当たり50万円の損害賠償などを国に求める訴えを、国際女性デーの3月8日、東京、札幌の両地裁に起こす。2011年から訴訟を続けている選択的夫婦別姓訴訟弁護団が明らかにした。

最高裁、過去2回は「合憲」

 弁護団の提訴は3回目。過去2回は最高裁大法廷が現行規定を合憲と判断したが、裁判官15人のうち第1次(15年)は5人、第2次(21年)は4人が違憲とした。最高裁は他の同種訴訟でも合憲とした。
 弁護団は現行規定を「夫婦のいずれかが姓を変えるか、双方が姓を維持するため結婚を諦めるか、過酷な二者択一を迫るもの」と批判。選択的夫婦別姓制度を求める世論の高まりなどから、個人の尊重を保障する憲法13条などに違反していると主張する。
 原告は、東京都の上田めぐみさん(46)と原田仁さん(51)、北海道の佐藤万奈さん(37)と西清孝さん(32)ら6組のカップル。姓が変わることへの違和感で法律婚を避けたり、法律婚後の改姓で強い喪失感を受けたりしたという。

◆国会論議促されるも…自民など反発して棚上げ

 選択的夫婦別姓は、法律婚後も希望すればともに改姓せずに済む制度で、法相の諮問機関の法制審議会が1996年に導入を含む民法改正案を答申。現行規定を合憲とした第1次訴訟の最高裁判決でも、制度に一定の合理性を認め「国会で論じられ、判断されるべきだ」としていた。しかし自民党などから「家族の一体感が壊れる」といった批判が続き、法改正は棚上げされている。(加藤益丈)
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◆口座手続き・不妊治療…なぜ不利益

 選択的夫婦別姓制度を待ちわびる声は切実だ。「今度こそ違憲判決を」。国際女性デーの3月8日に提訴する原告の一人、上田めぐみさんと、13年前に第1次訴訟を起こした原告の小国香織さん(49)は口をそろえる。
 「女の人は姓が変わるから誰が誰だか分からなくなる」。小国さんは小学生のころ、母親が同窓会名簿を見ながら言ったことが、ずっと引っかかっていた。
提訴を前に選択的夫婦別姓への思いを語る上田めぐみさん(左)と小国香織さん=東京・霞が関の東京地裁前で

提訴を前に選択的夫婦別姓への思いを語る上田めぐみさん(左)と小国香織さん=東京・霞が関東京地裁前で

 法律婚後、仕事で旧姓「小国」を名乗る一方、一部の銀行口座や納税は戸籍姓。使い分けへの違和感は続き2011年に小国さんを含め5人で提訴した。敗訴後は同種訴訟の事務作業をボランティアで続ける。
 事実婚を選んだ上田さんは、不妊治療を経て長男(4)を授かった。当時、事実婚は国の不妊治療費用の助成対象外。夫に親権がないなど不利益もある。

◆財界・地方議会、広がる賛意

 上田さんらの働き掛けもあり、国に選択的夫婦別姓制度を求める地方議会の意見書は計383件に達した。自民党にも賛意を示す議員が増え、経団連の十倉雅和会長は今月、導入の必要性に言及した。追い風を感じる2人は「これを最後にしたい。司法は今度こそ私たちの声を聞いて」と望む。
 「多くの女性が、実績をキープするため多大な労力を払っている」と話すのは原告の一人となる宇宙航空研究開発機構JAXA)の女性研究者(58)。改姓すると論文や特許などの実績があいまいになる。だが国際的な会合では戸籍姓が求められる。このためパスポート取得時などは、書類上でのペーパー離婚で何度も旧姓に戻してきた。「息子世代には、同じ不便な思いをさせたくない」(砂本紅年)