米軍PCB処理 情報公開の徹底必要だ(2024年2月27日『北海道新聞』-「社説」)

 防衛省が、在日米軍保有の高濃度ポリ塩化ビフェニール(PCB)廃棄物を、室蘭市や東京都の処理施設に持ち込むことを視野に検討していることが分かった。
 これまで受け入れてきた北九州市など西日本の3施設が、3月末で閉鎖することを受けた措置だ。
 ただ、環境省は「室蘭に持ち込むことはない」と明言し、防衛省とは見解が食い違っている。
 これではどちらの話を信用していいのか分からない。
 そもそも米軍のPCBに関しては、防衛省が明確な法的根拠がないまま、肩代わり処理をしてきた経緯がある。米軍が保有する総量さえも把握できていないという。
 日本政府の米側への過剰な忖度(そんたく)の結果と言うほかない。
 何より問題なのは、これまで政府がこうした実態を住民に周知することなく、処理を続けていたことだ。言語道断の対応である。
 室蘭でも同様のごまかしをすることは許されない。日本政府と米軍はまず情報の公開を徹底し、真摯(しんし)に対応しなければならない。
 日本政府は、2023年3月までの20年間で全国15の米軍施設や返還跡地から約463トンのPCB廃棄物を引き取り、代行処理した。そのために使った経費は4億5千万円に上るという。
 政府は日米地位協定の「施設等を米国に負担をかけないで提供する」などの規定に沿った対応と説明するが、明らかな拡大解釈だ。
 しかも、日米は02年の安全保障協議委員会(2プラス2)で、在日米軍が管理するPCB廃棄物を米本国に搬出して処理する方針で合意したはずだ。
 合意が厳格に履行されているとは言えず、放置されているのは看過できない。日本は米国に改めて自国処分を求めるのが筋である。
 米軍施設を巡っては、発がん性が指摘される有害な有機フッ素化合物「PFAS」が検出される問題でも汚染調査が進んでいない。
 日本政府は米軍に立ち入り調査を求め、実際どれだけのPCBが基地内に残っているのかについても、実態解明を進めるべきだ。
 室蘭市では、国内の西日本分のPCBを受け入れるかの議論が始まったばかりだ。
 米軍がこれまでのような閉鎖的な対応を続ければ、より不信感が高まっても仕方あるまい。
 一昨年、室蘭市東京電力福島第1原発周辺のPCB廃棄物を受け入れた際も論争が起きた。室蘭市や道は周辺住民の不安に寄り添った対応をしてもらいたい。