進む洋上風力発電 再エネ 再エネ普及の“切り札”に(2024年2月22日『福井新聞』-「論説」)

 NEDO: 国内初!沖合における洋上風力発電への挑戦―プロジェクト ...

NEDO: 国内初!沖合における洋上風力発電への挑戦―プロジェクト ...


再生可能エネルギー(再エネ)普及の“切り札”として、洋上風力発電所が次々と稼働している。県内では、あわら市沖で三つの民間事業体による計画がある。「脱炭素」に向けた動きとして注目したい。

 国が主導する大規模事業として2022年12月、秋田県能代港に建設された風車20基が国内初となる商業運転を始めた。その後稼働した秋田港沖の13基と合わせると発電容量は計約14万キロワットとなり、一般家庭13万世帯分に相当する。

 今年1月には北海道の石狩湾新港沖の発電所で商業運転がスタート。商用としては国内最大級となる。大型風車14基で一般の家庭約8万3千世帯分を発電できる。将来的には余剰電力を使って水素を製造することも検討する。先進事例として事業経過を見守りたい。

 政府は50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする脱炭素目標を掲げる。洋上風力は立地制約が少なく、陸上風力より風車の大きさや出力ともにはるかに大きい。

 政府の計画によると、洋上風力の発電能力について40年までに最大4500万キロワットに引き上げ、欧州連合(EU)、中国に続く世界3位の規模にする目標を示す。国が積極的に主導し実現させてほしい。

 県内の沿岸で比較的強い風が吹くエリアが、あわら市沖だ。北陸電力中部電力のグループ、電源開発三井不動産のグループ、日本風力エネルギーの3事業体が風力発電開発の意向を持つ。いずれも石川県境の沿岸を想定区域にしており、最大20~37基を並べる構想だ。いずれも環境影響評価(アセスメント)で配慮書の手続きを終え、国の「有望区域」選定に向け、漁業関係者らの理解促進を進めている。今後も丁寧な調整が求められよう。

 一般的に洋上風力発電普及に向けた課題は少なくない。風車の土台を海底に固定する「着床式」と、海に浮かべる「浮体式」があるが、着床式が世界の主流だ。遠浅の海が少ない日本は浮体式の普及も不可避となる。コスト低減が課題になろう。

 天候による出力変動もあり、需給バランスを保つのが難しい側面もある。電力を蓄電する技術力を一層高める必要がありそうだ。東北や北海道といった再エネ普及が拡大する地域から電力消費地に送る送電網の整備も急がれる。

 洋上風力の目標の4500万キロワットは原発45基分に相当する。原発再稼働の行方が不透明な現状だけに、政府は再エネ拡大に注力してほしい。