自民も訓練場「白紙」 計画撤回へ決断の時だ(2024年2月28日『沖縄タイムス』-「社説」)

 うるま市石川のゴルフ場跡地に陸上自衛隊の訓練場を新設する計画で、自民党県連が政府に対し、白紙撤回を強く求める考えを示した。近く、関係閣僚に要請するという。


 25日の県連役員会で方針を確認し、27日の県議会一般質問の冒頭で、沖縄・自民党の会派長でもある島袋大幹事長が公表した。

 県連はこれまで土地取得後に「市民との交友の場としての利用も視野に入れた計画の見直し」を申し入れていた。さらに白紙撤回へ踏み込み、方針転換したことになる。

 島袋氏は「現状で合意形成を得ることは難しい」と住民の反発を理由に挙げた。6月の県議選への影響を考えた可能性もあるが、政権与党の県内組織が決断した意義は小さくない。

 玉城デニー知事も17日の木原稔防衛相との会談で、計画の白紙撤回を求めていた。自民党県連が足並みをそろえたことに、「非常に賢明な判断だ」と歓迎している。

 自民党県連は、民主党政権時代に普天間飛行場の県外移設を求めた経緯がある。しかし、安倍政権下で賛成した。その後に政府政策に反対するのは異例だ。

 県議会で与党のみならず、最大会派で、野党の沖縄・自民党が計画反対にかじを切った意味は大きい。計画地とされるうるま市石川の旭区自治会が1月14日の臨時総会で計画反対を全会一致で決議してから、地元で大きなうねりを生み出している。

 無理筋な計画だと、政府は認識しなければならない。

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 自民党県連は自衛隊を容認する立場である。玉城知事も「専守防衛」の範囲で認めている。にもかかわらず、白紙撤回を求めるのは、訓練場が住民生活や教育の場に近過ぎるからだ。

 説明会で空包を使わず、ヘリコプターは災害、緊急時以外に飛ばさないと、当初の訓練内容を変更した防衛省に対し、住民側は「信用できない」と断念を訴え続ける。

 加えて在日米軍専用施設面積の7割以上が集中する沖縄での訓練場の新設は、自衛隊施設といえども「負担増」につながるのは間違いない。

 防衛省那覇市陸自第15旅団の師団への改編、うるま市の勝連分屯地への地対艦ミサイル連隊本部配備など、県内で自衛隊増強を進める。

 政府は「防衛力強化」と主張する一方、なぜ必要か、県民への影響はどうなるのか、といった不安や懸念に耳を傾けようとしない。

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 うるま市中村正人市長は明確な賛否を示さず、27日の本紙取材にも無言だった。

 住民の声が届いていないのか、他に理由があるのか。住民の安全と安心を預かる地元市長として、明確に態度を表明すべきである。

 林芳正官房長官自民党県連の方針転換について、27日の会見で「白紙にする考えはない」と即座に否定した。

 沖縄の土地を自由に使えると錯覚していないか。

 政府の対応は傲慢(ごうまん)で不遜と言わざるを得ない。

 「国の専管事項」を口実にこれ以上、地元住民の声を無視することは許されない。