中堅企業の支援 成長促し地域経済の牽引役に(2024年2月26日『読売新聞』-「社説」)

 大企業と中小企業の中間に「中堅企業」の枠を新設し、成長を促すことになった。経済の底上げと、賃上げの波及につなげていきたい。

 中堅企業の枠は、企業の設備投資や事業再編などを後押しする産業競争力強化法を改正して創設する。政府は、改正法案を閣議決定しており、今国会に提出して年内の施行を目指す。

 現行の産業競争力強化法では、製造業の場合、従業員300人以下、または資本金3億円以下が中小企業に分類され、それ以外は大企業の扱いになる。

 改正案は、これら大企業のうち、従業員数2000人以下の企業を全て中堅企業とする。

 経済産業省によると、新たな区分では約1300社が大企業、約9000社が中堅企業となる。氷菓ガリガリ君」で有名な埼玉県の赤城乳業や、アウトドア用品を扱う新潟県スノーピークなどが中堅企業に該当するという。

 海外事業に注力しがちな大企業と異なり、中堅企業は地域に根ざし、雇用の受け皿となっているケ

ースが多い。重点的に後押しすることで、地域経済の 牽引けんいん 役にしようとの狙いは理解できる。

 日本では、中小企業向けの支援が手厚く、資金繰りや税制などで多くの優遇措置がある。

 大企業には、それらの措置が少ない。このため、大企業に移行できる実力があっても、移行するとかえって不利になるとして、規模拡大をためらう傾向があった。

 政府は、賃上げ促進税制に中堅企業向けの優遇枠を新設する。

 企業が賃上げした場合、大企業は、賃上げ率が7%なら賃金を増やした総額の25%分を法人税から差し引けるが、7%未満なら控除率が減る。中堅企業に対しては、4%の賃上げでも25%分の控除が受けられるようにする。

 また、改正案では、中堅企業のうち、賃金水準が高く、国内投資に積極的な企業を「特定中堅企業」と定めた上で、合併・買収(M&A)による事業拡大を促す。

 複数回のM&Aを行った場合、将来の損失に備えて積み立てる準備金のうち損金に算入できる割合を増やし、税負担を軽くする。

 後継者難に直面している中小企業は多い。中堅企業を受け皿とするM&Aを広げることで、中小の事業承継の促進を図るという。

 意欲のある企業が、賃上げや事業拡大をしやすい環境を整えることは重要だ。政府は、制度の周知に取り組むとともに、さらなる支援策の強化も検討してほしい。