GDP4位転落/生産性高める取り組み急げ(2024年2月21日『福島民友新聞』-「社説」)

 昨年の国内総生産(GDP)速報値で、日本は経済規模をそのまま表す名目がドル換算で、ドイツに抜かれて世界4位に転落した。

 円安ドル高やドイツの物価高が影響したことによるもので、ドイツと日本の順位が再び入れ替わる可能性はある。ただ国際通貨基金が2026年にはインドにも抜かれると予測を示しており、世界経済に占める日本のGDPの比率はさらに低下する公算が大きい。

 強い経済を背景に国際社会での発言力を確保してきた日本の存在感低下は避けられない。日本の存在感をどう保っていくのかを考えるきっかけにする必要がある。

 名目GDPの金額自体は過去最高で、1991年以来の高い伸びだったにもかかわらず、4位に転落した要因には、バブル景気崩壊後、賃金と設備投資が抑制され、経済の低成長が続いたことがある。この間に個人消費を含めた内需が伸びなかったことや、強みとしてきた半導体産業などでシェアを縮小させたことも響いている。

 世界経済に比べ、日本経済の成長のペースが鈍いのが、最大の課題だ。内需拡大に向けては、賃上げにより消費を活性化できるかどうかが焦点となる。しかし、昨年の春闘の賃上げ率は約30年ぶりの高水準となったものの、物価の上昇を上回るものとはならず、実質賃金はマイナスとなった。

 企業側には今年の春闘で実質賃金をプラスとすることで、内需の拡大に向けた好循環を自らつくり出す姿勢が求められる。

 大企業の賃上げが進んでも、それだけで消費拡大の強い流れを生み出すのは難しい。国の賃上げ税制を活用するなどしながら、労働者の7割が働く中小企業まで賃上げを波及させ、長期的な成長につなげていくことが重要だ。

 人手不足がさまざまな業種で深刻化する中、1人当たりの生産性を高めていくことも急務だ。生産者人口が日本の3分の2であるドイツが、日本のGDPを上回った。これは、ドイツの1人当たりの生産額が日本の1・5倍以上あった計算になる。

 生産性を高める上で重要なのが設備投資だが、日本は低調な状態が長く続いている。情報技術を含めた設備投資を進めることで1人当たりの生み出す利益を増やせる余地がある。

 日本が直面している少子高齢化や人手不足の問題は今後、国際社会全体が向き合わなければならないものだ。こうした課題の解決と経済回復の道筋を見いだすことで、日本の新たな強みをつくり、存在感を高めていきたい。