診療報酬の改定 負担に見合う医療充実を(2024年2月26日『毎日新聞』-「社説」)

医療・介護・障害福祉関係団体との賃上げに関する意見交換の会合で発言する武見敬三厚生労働相(中央)。右は岸田文雄首相=首相官邸で2024年1月19日午後1時17分、竹内幹撮影


 国民の健康を支える人材の待遇を改善するとともに、患者の負担増に見合うよう、医療の充実を図らなければならない。

 2024年度の診療報酬の改定内容が決まった。最大の柱は賃上げだ。看護師や薬剤師などの給与改善を目的に、報酬を上積みする仕組みを新設した。

 その対象とならない若手勤務医らの賃上げの原資を確保するため、初診・再診料や入院基本料も引き上げる。

 患者の窓口負担は増えることになる。初診料の引き上げは消費税増税時を除き20年ぶりだ。

 重要なのは、若手勤務医らの収入増に確実につなげることだ。引き上げ分は使い道が決められておらず、給与に反映されたかどうか、検証する仕組みが欠かせない。

 医療費の伸びを抑えることも重要だ。カギを握るのは3割程度を占める生活習慣病の扱いである。

 糖尿病、高血圧、高脂血症の患者を診た際の報酬を見直し、抑制を図る。国費ベースで200億円程度の削減につながるとされるが、45兆円超の医療費全体からすればごくわずかだ。

 25年には団塊の世代が全員75歳以上となる。医療と介護をつないで高齢者の命と生活を支える取り組みが求められている。

 治療だけでなく、退院後の生活を見据えたリハビリなどを早期から行う「地域包括医療病棟」を新設する。

 救急搬送される高齢者の受け皿となる。ほとんどが中・軽度だが、入院中に適切な栄養管理やリハビリが行われずに、介護度が重くなるケースが問題視されてきた。

 高度医療を担う医療機関から新設される病棟へのスムーズな受け入れを後押しする。

 今回は介護報酬との6年に1度の同時改定となり、医療機関介護施設の連携強化も盛り込まれた。特別養護老人ホームなど介護施設に、24時間対応が可能な医療機関などとの協力を義務づける。医師が往診したり入所者を入院させたりした場合、医療機関の報酬が増える。

 報酬改定だけで医療現場の抱える課題の全てが解決できるわけではない。国や都道府県は現場任せにせず、地域にふさわしい体制作りに汗をかかなければならない。