2024年度の診療報酬改定の内容が決まった。公的サービスである医療分野でも、賃上げを進めることが主眼だ。
政府は昨年末、医療機関に支払う診療報酬のうち、人件費などに回る本体部分を0・88%引き上げることを決めている。
これを踏まえ、具体的な措置として初診料や再診料、入院基本料を引き上げる。初診料は2910円、再診料は750円とし、それぞれ30円、20円増やす。入院基本料は病棟の種類に応じ、1日あたり50~1040円引き上げる。
医師や看護師、薬剤師らの賃上げを実現するには、その原資を薄く広く国民に負担してもらうことが欠かせない。今回の改定の狙いについて、政府は国民に丁寧に説明していくことが大切だ。
初診料の引き上げは、消費増税に伴うものを除くと、06年度以来となる。多くの医療機関で収入が増えることになり、政府は今後2年間で計4・5%の賃上げを実現できると見込んでいる。
さらに今回の改定では、初診料などの引き上げとは別に、看護師や薬剤師らの賃上げに目的を特化した加算「ベースアップ評価料」も新設する。医療機関が賃上げの計画を提出した場合にこの加算の請求を認める。
政府は、医療現場で賃上げがきちんと実施されているか調査すべきだ。増収分を賃上げに回していない場合、報酬の返還を求めるなど厳正に対処する必要がある。
近年、勤務医の過労自殺が起きるなど、医師の長時間労働が問題視されている。
4月からは「医師の働き方改革」が始まり、勤務医の残業時間が原則、年960時間までとなる。電子カルテの活用などで業務の負担を軽減してもらいたい。
また、政府は今回の改定で、救急搬送される高齢者の増加に対応するため、「地域包括医療病棟」の仕組みを新設した。
高齢の救急患者は軽症・中等症が大半だが、入院中に体力が低下し、重症者の治療にあたる急性期病棟での入院が長期化しがちだ。このため、リハビリなどの機能を強化した新病棟を設け、役割分担を明確にする狙いがある。
高齢者人口がピークを迎える40年頃を見据え、医療体制も着実に手直ししていかねばならない。