診療報酬改定 看護師らの処遇改善急げ(2024年2月19日『新潟日報』-「社説」)

 看護師らの処遇改善を急がねばならない。一方、国民の負担が増す可能性がある。政府は改定の理由を丁寧に説明するとともに、効果を検証していく必要がある。

 厚生労働省は、医療機関の収入に当たる診療報酬の2024年度の改定内容を決めた。

 看護師ら医療従事者の賃上げ原資にするため、初診や再診、入院時にかかる基本的な診察料金を幅広く引き上げる。

 初診料は原則2880円から30円増やし、一部診療所で最大700円を上乗せする。再診料は、730円から20円増やし、最大100円上乗せする。

 今回の診療報酬改定の狙いは、物価高騰や他産業の賃上げを踏まえ、医療従事者の賃金で2%以上のベースアップを実施し、処遇改善による人材確保を図ることだ。

 全ての患者で初診料を引き上げるのは、消費税増税時を除けば、04年度以来20年ぶりとなる。

 診療報酬の財源は、保険料や税金、利用者の窓口負担で賄われているため、国民の負担が増すことが想定される。

 初診料などの増額分が、賃上げにきちんと振り向けられるかどうかの検証が欠かせない。政府は、自己負担が増える患者らへの説明も尽くさなければならない。

 気がかりなのは、マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」の利用率アップのため新たな加算を設けたことだ。治療に活用すれば、初診時に80円を加算する。3割負担だと患者は24円を支払う。

 そもそもマイナ保険証は、個人情報のひも付けなどのトラブルが相次ぎ、国民の不信は根強い。利用率は4%台にとどまる。

 政府は、薬局などから患者に利用を促す役割を担ってもらいたい意向だが、医療機関側には「現場の混乱に拍車がかかるだけだ」などと疑問視する声もある。

 現行の健康保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化する期限は12月に迫る。政府は前面に立って不信解消に努める必要がある。

 生活習慣病の一部は報酬を引き下げ、医療費の抑制を狙う。

 軽症や中等症の高齢者の救急搬送や入院が増える中、早期退院に向けたリハビリを担う「地域包括医療病棟」を新設する。

 入院料の支給を、一般病棟より高い1日3万500円とすることで、移行促進を目指す。

 医療機関の役割分担を進め、限られている医療従事者や医療費を適切に活用してほしい。

 24年度は「診療」「介護」「障害福祉サービス」の3分野の報酬が、6年ぶりに同時に改定される「トリプル改定」となった。

 超高齢化の進行で、3分野の垣根を越えた普段からの情報共有が大きな課題となっている。一層の連携強化や効率化に向けた知恵も求められる。