次期戦闘機輸出 安直な「例外」を認めるな(2024年2月21日『信濃毎日新聞』-「社説」)

 いったん例外を許せば常態化しかねない。

 日本が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の輸出を巡る自民、公明両党の協議がきょう再開する。

 開発体制や作業分担に関する検討が本格化するのを前に、岸田文雄首相は与党から「輸出解禁」の答えを得たいとする。公明は「歯止めが必要」とし、慎重な姿勢を崩していない。

 次期戦闘機は航空自衛隊F2戦闘機の後継機となる。同様に「ユーロファイター」の次に位置付ける英伊と2022年、共同開発に合意。既に資金拠出などを盛った条約に署名し、35年度までの配備開始を目指している。

 「防衛装備移転三原則」に照らすと、日本はこの戦闘機を第三国に売れない。三原則を変更した昨年の自公協議は殺傷兵器の輸出解禁にかじを切った一方、他国と共同開発する兵器の輸出に公明は同意せず、先送りされた。

 第三国に売れなければ開発の主導権は握れず、膨大な費用を回収できない。防衛産業への打撃となり、今後の共同開発にも差し支える―。政府の言い分だ。

 そこで自民は共同開発全般の輸出解禁は見送り、次期戦闘機に限って輸出を認める“妥協案”を持ち出している。

 英伊などが開発したユーロファイターは中東に渡り、空爆で多くの市民の犠牲を生んだ。殺傷兵器の輸出は、ウクライナやガザのような惨劇に日本製の兵器が加担することを意味する。二度と他国の人々を脅かさないとした戦後日本の立脚点を覆す。

 首相は国会で、防衛産業を再生し兵器を売って稼ぐ方策を「国益だ」と言い切った。そもそも国の土台に関わる殺傷兵器輸出を、与党との調整だけで閣議決定したこと自体、正当性を欠く。

 「国民は第三国に輸出しない前提を支持している。重要な政策をなぜ変えるのか、議論が尽くされていない」。公明の山口那津男代表の弁はもっともだ。

 首相は、いまだ果たされていない敵基地攻撃ミサイルの導入や防衛費の大幅増額と併せ、必要性の説明を尽くさなくてはならない。その上で、もっと幅広い層の議論へとつなげ、安全保障のあり方を練り直すべきだ。

 米英豪が最新兵器の共同開発に向け、日本に参画を呼びかけている。兵器輸出全面解禁のもくろみはとめどない。

 公明は安易な妥協案に乗じてはならない。防衛政策全体を見据えつつ協議に臨んでほしい。