木原稔防衛相は17日、沖縄県の玉城デニー知事と県庁で会談した。米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画について理解を求めたが、玉城氏は移設工事の中断を求め、政府と県の隔たりが改めて浮き彫りになった。
陸上自衛隊の訓練場建設計画にも反対の声が上がっており、政府への不満が募れば防衛力の「南西シフト」に影を落としかねない。
【写真】「世界一危険」と言われる普天間飛行場の移設工事が着々と進行。辺野古沖の大浦湾で石材を投入する作業船
「辺野古移設が唯一の解決策だと考えている」 木原氏は会談でこう語り、移設計画に理解を求めた。
だが、玉城氏は「ただちに工事を中断し、対話に応じてもらいたい」と改めて反対の立場を強調した。 普天間飛行場の辺野古移設を巡っては、政府は県に代わって軟弱地盤の改良工事に必要な設計変更を承認する代執行に踏み切り、1月10日、大浦湾側の工事に着手した。
今回の会談で、両氏は「世界一危険」とされる普天間飛行場の危険性除去が必要との認識で一致するにとどまった。 自衛隊の態勢強化に関しても課題が浮上する。防衛省は同県うるま市のゴルフ場跡地に陸自の訓練場新設を計画する。
令和8年度に予定する陸自第15旅団の師団化に伴う部隊増強に対応するためで「南西防衛強化の重要な基盤」(森下泰臣陸上幕僚長)と位置付ける。
だが、同省が11日に行った地元説明会では、生活環境への悪影響を懸念する住民らから反対の声が相次いだ。玉城氏も木原氏に地元の意向を尊重するよう訴えた。
新たな対立の火種となりかねず、事態を重く見た木原氏は17日、面会した同市の中村正人市長に計画を再検討する考えを伝えた。
日本周辺で軍事活動を活発化させる中国などを念頭に、沖縄を含む南西地域の防衛力強化は喫緊の課題だ。政府は第15旅団の師団化に加え、地対艦ミサイルや地対空誘導弾、電子戦の部隊配備などを進めたい考えだが、地元との対立が深まれば防衛力の整備計画が滞る恐れがある。
木原氏は玉城氏との会談後、記者団に「地元と意思疎通を図り、南西方面の防衛力の抜本的強化に向けて成果を出していく」と強調した。(小沢慶太)