皇后雅子さまが、着物をお召しになる機会が増えてきた。9日にあったケニア大統領夫妻との会見と午餐では、お召しになっていた優美な友禅染の訪問着が、大統領夫人の淡いレースのドレスと優しく調和していた。愛子さまも淡い色の装いだったが、こちらは洋装だった。海外の賓客らを接遇する場面では、どんな「ドレスコード」があるのだろうか。
【写真】思わず見とれてしまう!愛子さまや雅子さまのティアラとドレス
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ケニア大統領夫妻との会見と午餐に際して雅子さまがお召しだったのは、柔らかな雰囲気の友禅染。末広がりで繁栄を表す扇の文様、扇面(せんめん)には吉祥文様の桐や笹、そして神の使いとも言われる鷺が優美に描かれていた。
令和に入り両陛下は、海外からの賓客を接遇する場で、「和」のおもてなしをする機会を増やしている。これまでフランス料理のコースであった午餐(昼食会)にも、和食や日本酒、グラスも江戸切子を用いるなど、令和流の色が見えてきた。 雅子さまが和装をお召しの機会が増えているのも、そのひとつだろう。
昭和の時代から皇室に着物をつくり、納めてきた「染の聚楽」代表の高橋泰三さんは、天皇陛下とともに主催者である雅子さまは指輪などのアクセサリーをつけず、着物が引き立つような着こなしをされていると話す。
「訪問着には、金箔が華美過ぎず上品にあしらわれています。松に吉祥柄を金箔でかさね、有吉有職文様の菱格子の柄に用いた金箔が、柔らかな印象を与えています」
雅子さまは、帯にも松の文様をお選びだ。白地に松菱を縦に織り上げた袋帯だという。 極寒の雪のなかでも瑞々しい緑をみせる松は、生命力や長寿の象徴。寒い季節に、アフリカから来日した大統領夫妻への祝福のメッセージでもあり、本格始動する令和皇室を表すような印象だ。
■お客さまとの話題に花が咲く着物
皇室ではこれまでも、海外からの賓客やゲストを女性皇族が和服でもてなしてきた。
春と秋に開催される園遊会は、国内の著名人らのほかに、日本に駐在する大使などを接遇する意味もあり、女性皇族は洋装と和装を交互に取り入れている。
晩餐会も、正礼装のティアラとドレスではなく、着物で出席することもある。午餐でも和服の機会が増えている。
2019年に来日したウズベキスタン大統領夫妻を招いた午餐では、皇后雅子さまと秋篠宮妃の紀子さま、長女の小室眞子さん、次女の佳子さまが着物姿で出席している。 宮中で侍従として務めた人物は、こう話す。
「女性皇族方が着物をお召しですと、お客さまとの話題に花も咲きますし、なによりゲストが喜ばれます」
■ドレスコードは皇后が調整
先日のケニア大統領夫妻との午餐では、愛子さまの振袖姿での出席が期待されたが、淡い色のセットアップと後ろにふんわりとデザインされたリボン飾りが愛らしい帽子を着用していた。
なぜ愛子さまは、振袖ではなかったのだろうか。 「体調を崩していた秋篠宮妃殿下が出席を控え、急遽、愛子内親王殿下が出席というあわただしい午餐デビューとなったため、ひとつには準備をする時間がなかったと思われます」(前出の元侍従を務めた人物)
公式の場で女性皇族が集まる場合、ドレスコードは皇后が調整する。令和の時代から皇室を良く知る人物によれば、平成の時代は皇后であった美智子さまが和装か洋装か、もしくはドレスの色などを調整して各宮家に伝えていたという。
「令和に入ってからは、皇后雅子さまのご体調もありますし、また両陛下主催の行事が多く、雅子さまが決定なさることも増えたため、ドレスコードも以前よりは緩やかになっているようです。今回も皇后さまは着物、愛子さまは洋装でしたが、皇后さまがよろしければ特に問題はありません」
前出の元侍従も、急遽の出席のために準備の時間がほぼないなか、愛子さまが着物をお召しになるのは負担が大きかったのでは、と見る。
「愛子さまはまだ大学生でいらっしゃるため、着物をお召しの機会はそうありません。慣れない着物で、ゲストに会話などで気を配りながら、ご自身でもお食事をなさるのは、すこしばかり大変かもしれません。洋服の感覚で召し上がると袖を汚しやすいものです。特に、振袖で椅子にお座りになるときは汚れが付かないようお袖を膝の上に置くなど、扱いが大切になります」
雅子さまが接遇の場で着物を品よくお召しなのも、晩餐会や午餐、園遊会や公務での和服の経験があってこそだろう。
愛子さまが公式の場に姿を見せる機会は、これから増えてきそうだ。和服の正礼装となる愛子さまの振袖姿は、ゲストの心をあたたかく和ませてくれるにちがいない。
(AERA dot.編集部・永井貴子)