防衛費43兆円ではやっぱり足りない? 防衛省の有識者会議、初会合でいきなり増額論「タブー視するな」(2024年2月20日『東京新聞』)

 防衛省は19日、防衛力の抜本的な強化に関する有識者会議を設置し、初会合を開いた。座長に就任した榊原定征経団連名誉会長は、2023年度から5年間の防衛費を総額43兆円程度に増額する政府方針を巡り、円安や物価高などを踏まえてさらなる増額の可能性に言及した。林芳正官房長官は同日の記者会見で防衛費の見直しを否定した。(川田篤志

◆物価や人件費高騰、為替変動を念頭

 榊原氏は会合で「昨今の物価や人件費の高騰、為替変動を考えると43兆円の枠の中で本当にできるのか見直す必要がある」と主張。その上で「見直しをタブー視せず、実効的な水準のあり方などを議論するべきでは」と提案した。ほかの委員からも増額の検討を求める意見が相次いだという。

 林氏は19日の記者会見で、榊原氏の発言に対し「あくまで有識者としての立場からの意見だと理解している」と説明。23年度から5年間の防衛費に関し「43兆円程度の規模を超えることなく防衛力の抜本的強化を実現する。見直しは考えていない」と述べた。岸田文雄首相は国会で、「必要な防衛力を用意するために積み上げた。この範囲内で強化する方針は変わらない」と答弁していた。

◆会合は一部除き非公開…後日に議事概要を公表

 有識者会議は、22年12月に閣議決定した国家防衛戦略で「戦略的・機動的な防衛政策の企画立案機能の強化」を目的に設立が明記されていた。今後は年数回ほど開き、識者の意見を政策に反映させる。この日の会合は終盤の榊原氏らのあいさつを除き非公開。後日、議事概要を公表するという。

防衛力の抜本的強化に関する有識者会議概要


主管省庁及び庶務担当部局    防衛省大臣官房企画評価課
TEL:03-3268-3111(内線:22474)
根拠法令等    事務次官通達


目的    国家防衛戦略及び防衛力整備計画(令和4年12月16日国家安全保障会議決定及び閣議決定)の方針を踏まえ、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案機能を抜本的に強化し、もって防衛力の抜本的強化を実現していくにあたり、各界を代表する有識者や専門家の方々の理解と協力を得るような仕組みを構築することが必要であることから、防衛力の抜本的強化に関する有識者会議を開催するもの。

 

防衛力の抜本的強化に関する有識者会議開催要綱 

(趣旨) 
第1 国家防衛戦略(令和4年12月16日国家安全保障会議決定及び閣議
定)及び防衛力整備計画(令和4年12月16日国家安全保障会議決定及び
閣議決定)において、自衛隊が能力を十分に発揮し、厳しさ、複雑さ、スピー
ド感を増す戦略環境に対応するためには、宇宙・サイバー・電磁波の領域を含
め、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案が必要とされており、その機能を抜
本的に強化するため、有識者から政策的な助言を得るための会議体を設置す
ることとされている。この方針を踏まえ、防衛力の抜本的強化を実現してい
くにあたり、各界を代表する有識者や専門家の方々から率直な意見を伺って
いくことができる仕組みを構築することが適切であることから、防衛力の抜
本的強化に関する有識者会議(以下「会議」という。)を開催する。 


(討議事項等) 
第2 会議は、防衛力の抜本的強化を実現するための課題について討議を行う。 
2 会議は、総会において全般的な取組に係る重要事項を討議し、総会の下に部
会を置き、部会において個々の施策に係る重要事項を討議する。 


(構成等) 
第3 総会及び部会の委員は、様々な専門知識を有する部外の学識経験者、政府
における実務経験者等のうちから、それぞれ大臣官房長が委嘱する。 
2 総会及び部会の構成は、それぞれ次のとおりとする。 
(1)総会 
ア 総会に座長を置き、委員の互選によりこれを定める。 
イ 座長代理は、座長が指名する委員をもって充てる。 
ウ 座長代理は、座長を助け、座長が不在の場合、その職務を代理する。 
(2)部会 
ア 部会に部会長を置き、委員の互選によりこれを定める。 
イ 部会長が不在の場合、部会長が指名する委員が、その職務を代理する。 
3 総会及び部会の委員の任期は、原則として2年とし、再任を妨げない。 

(関係部局の協力) 
第4 座長及び部会長は、総会及び部会における討議のために必要があると認
めるときは、関係部局に対し、関係者の出席、資料の提供その他の協力を求め
ることができる。 
2 関係部局は、前項の求めがあった場合には、これに応じ、協力するものとす
る。 

(秘密を守る義務) 
第5 委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退
いた後も同様とする。 

(公開等) 
第6 会議は、非公開とする。ただし、会議の議事要旨については、原則として
公表するものとする。 

(庶務) 
第7 会議の庶務は、大臣官房文書課及び防衛政策局防衛政策課の協力を得て大
臣官房企画評価課において処理する。 

(委任規定) 
第8 この要綱に定めるもののほか、会議の議事の手続その他必要な事項は座長
が、この要綱の実施に関し必要となる細部事項は大臣官房長が、それぞれ定
める。