ブレイキン(ブレイクダンス)の全日本選手権最終日は18日、東京・NHKホールで行われ、女子は福島あゆみ(ダンサー名・AYUMI)が決勝で昨年大会3位の半井彩弥(AYANE)に勝ち、3連覇を果たした。男子は18歳の菱川一心(ISSIN)が決勝で、大能寬飛(HIRO10)に勝って初優勝した。
このほか、男子では大会4連覇を狙ったパリ五輪代表の半井重幸(SHIGEKIX)が準決勝で菱川に敗れたものの、3位決定戦で飯沼月光(TSUKKI)を退けた。女子の3位決定戦は、間瀬なのは(NANOHA)が津波古梨心(RIKO)を下した。
◆パリ代表・半井重幸の4連覇阻止
新時代の主役に名乗り出た。男子で初優勝の菱川は「懸けていた大会。ベストを出せた」と笑った。
準決勝の相手は、世界ランキング1位の半井重。「ずっと負けていたから倒したかった。シゲキ君(半井重)のためだけに、めっちゃ考えた」と新技をぶつけた。
ひそかに温めていたのは、頭や背中などを軸に回転する「パワームーブ」と呼ばれる要素。左手で右足を持ちながら、右手一本で体を回す独創的な動きだ。出し惜しみすることなく、3ラウンド制の1本目から披露。観客をどよめかせる圧巻の演技で2?1と競り勝ち、絶対王者に「僕のベストに対して、彼の爆発力が際立ってよく見えた」と白旗を揚げさせた。
決勝は同世代の大能に3?0と完勝。5、6月の五輪予選シリーズでパリ行きを目指す18歳は「時間がない。今すぐ練習して新しい動きを開発したい」。あくなき向上心の先に、ひのき舞台が待っている。(鈴木啓紀)
◆40歳の女王・福島が全日本3連覇、パリ向け「やるしかない」
ダンス中の記憶があいまいになるくらい、疲労は蓄積していた。それを上回ったのは「楽しい」という感覚。女子の福島は3連覇した瞬間、対戦相手の半井彩と何度も抱き合った。
軽快なステップやしゃがんだ体勢からの逆立ち、手を支えに脚を開いて旋回など、きつい動きの連続でもパフォーマンスは落ちない。笑顔も保った。限界に近くても女王にふさわしい演技を見せた。「ここで(半井彩と)踊れて本当にうれしい」。前回3位の好敵手と最高の舞台をつくりあげ、満面の笑みだった。
前日から既に10回以上踊り、40歳の体は悲鳴を上げていた。だが、それは相手も同様。腹をくくって3回ずつ踊る決勝に臨み、直前に「行くぞ」と半井彩を鼓舞までした。第1ラウンドを落としながら、残り2ラウンドを制して逆転勝ち。「AYANEも応えてくれた。すごくうれしい」。ともに死力を尽くした敗者へ、感謝の言葉を口にした。
パリ五輪出場を懸けた5、6月の予選シリーズに向け「メンバーも環境も違う。全力を尽くす」。まだ休む暇はない。(渡辺陽太郎)