20歳を迎えた佳子さまが『歌会始の儀』で詠みあげた母・紀子さまへの思いと今年の歌の“特徴”(2024年2月19日)

佳子さまが毎年楽しみにしている紅葉

儀式中の佳子さまの様子

佳子さまの歌の特徴

 歌会始の選者で山梨県立文学館長の三枝昻之さんに、佳子さまの歌の特徴などを解説してもらった。

「今回、『小春日和』という発想は応募作品にも意外に少なく、佳子さまの題の受け方に工夫がありました。そこが第一の注目点です。風景や人との交歓を和歌の五七五七七の展開に導かれて素直に表現するのが佳子さまの特徴で、今回の木々の色づきを喜ぶお歌にもその特徴が生きています。

 第二の特徴は、初句の『待ちわびし』から結句『風にゆらるる』へと流れるような自然な調べの心地よさです。その調べと『小春日和』という柔らかな題の受け方のマッチングも素敵ですね。

『小春日和』からは嫁ぐ前の娘の気持ちを歌った山口百恵さんの『秋桜』を連想する人などもありそうです。それはそれで否定しませんが、歌はまず表現されたとおりに読むことが大切です。『待ちわびし』には異常気象がやっと落ち着いて迎えた秋本来の色づく季節への安堵感と喜びを基本にして読むべきと私は考え、そういう点から評価しています」

 次に、佳子さまと清子さんの歌を比べてもらい、感想を聞いてみた。三枝さんはこう答える。

「佳子さまに比べると黒田さんの歌は想像力豊かで、イメージの広がりに特色がありますね。歌人としては黒田さんのほうがより個性的な表現ですね。母、美智子さまの影響があるのかもしれません」

 NHKの中継で『歌会始の儀』を見ながら私は、素晴らしい歌とは別のことが終始、気になって仕方がなかった。中央に座る両陛下の他に、女性皇族は秋篠宮紀子さまや佳子さまなど5人だったが、男性皇族は秋篠宮さまただ1人だったことだ。今は皇室も女性が活躍する時代なのだと見るのか、それとも皇室の将来が案じられる、と見るのか……。私の心にさざ波が立った。

<文/江森敬治>

えもり・けいじ 1956年生まれ。1980年、毎日新聞社に入社。社会部宮内庁担当記者、編集委員などを経て退社後、現在はジャーナリスト。著書に『秋篠宮』(小学館)、『美智子さまの気品』(主婦と生活社)など

 

美智子さまの気品―誠に下とお子様、そしてお孫さまと歩まれた50年