東京電力福島第1原発の現場取材報告の後編では、事故発生当初から収束作業の大きな障害となってきた汚染水の問題を取り上げる。溶け落ちた核燃料(デブリ)の冷却水に、地下水や雨水が加わって水かさが増す。数々の対策を講じ、流入量は減ったものの止まってはいない。汚染水処理で発生する高濃度汚泥をどう貯蔵するか新たな難問も浮上している。(山川剛史)
今回の取材では、数あるタンク群の中で、最も南側のエリアも含めて回った。放射性セシウムなどは除去されているため、放射線量は毎時1マイクロシーベルト前後と、タンクに囲まれた場所でも、タンクからの線量はほぼない様子だった。
◆汚染水処理で発生する汚泥 置き場なくなれば処理できず
懸念されるのは、ストロンチウムなどを除去する多核種除去設備(ALPS)の前処理で発生する高濃度汚泥の貯蔵だ。専用容器に詰められ、コンクリート施設で貯蔵されるが、汚泥が発する放射線の影響で容器の寿命が短くなり、貯蔵施設の空き容量に不安が出てきている。
東電は、汚泥を脱水して金属コンテナ貯蔵に切り替える計画だが、2022年に脱水施設が稼働しているはずだったが、まだ設計内容が決まっていない。仮に汚泥の貯蔵ができない状態になれば、汚染水処理そのものが続けられなくなってしまう。
日々の処理に加え、タンク貯蔵中の7割近くは海洋放出の基準を満たしておらず、再びALPS処理することが不可欠であることも考えると、汚泥問題の解消は喫緊の課題だ。
汚染水は減ったとはいえ日々90トン増え続けている。1号機の大型カバーが完成すれば雨水は減る。地下水は建屋地下の配管周りから流入しているとみられるが、5号機で試験中の建屋間の止水がうまくいくかどうか。最も地下水が多い3号機でも技術展開したいところだが、まだ何とも言えない段階だ。
◆処理水放出 海への影響は?
東電はALPS処理後、基準を満たした水を海洋放出していく方針だが、30年の長期にわたるという。