自問自戒(2024年2月18日『高知新聞』-「小社会」)

 いつも頭に巻いているバンダナがトレードマーク。神戸学院大教授の上脇博之さんは政治とカネのありようを問い続けている。今の政治資金問題もこの人の告発を契機に火がついた。

 もとは一昨年の「しんぶん赤旗」の報道。コメントを求められた際に資料を見て、「これは事務的なミスではない」と直感した。その後、政治資金パーティーの膨大な資料を精査。あまりの作業量に「心が折れそうだった」というが、これで検察が動いた。

 上脇さんは全国の仲間とオンブズマン活動もしてきた。追及される側からは、やれ変人だの左翼だのといわれのない嫌われ方もするが、彼らが暴き、ただしてきたことは数多い。県内のオンブズマン宅も、たいていはコピーされた資料が山積み。自腹で開示請求し、地道に調べる。

 ここからは天につばするような話になる。政界に巣くった因習。それを上脇さんらではなく、なぜ報道機関が世に出せなかったのか。派閥単位にまで張り付いている多くの記者は何をしていたのか、というわれわれメディアのつらい自問だ。

 優れた調査報道は中央にも地方にもたくさんある。ただ、それでも今の政治取材が国民の負託にどれだけ応えているかといえば、疑問符もつく。ややもすると「政策より政局」になり、結果として政治家を利してはいないか。

 政治同様、報道機関に突きつけられているものも大きい、と自戒をこめて書いておく。