尖閣諸島情勢 政府は主権を守る意思を示せ(2024年2月18日『読売新聞』-「社説」)

 

 尖閣を断固として守り抜く、という日本の意思を中国に対しては無論、国際社会に明確に発信していくことが重要だ。

 沖縄県尖閣諸島沖の日本の排他的経済水域EEZ)内で先月下旬、中国のブイが漂流しているのを海上保安庁の巡視船が見つけた。

 ブイは数日後に見当たらなくなった。政府は、海中に沈んだとみている。中国外務省は「長江の河口付近に設置していたブイが故障し、漂流した」と説明した。

 尖閣沖のEEZ内では、昨年も中国の海洋調査用とみられるブイが見つかっている。国連海洋法条約は、他国のEEZ内で科学的調査を行う場合、沿岸国の同意を得ることを定めているが、中国は日本に無断で設置した。

 中国が、あたかもこの海域が自国の管理下にあるかのように振る舞っているのは、尖閣の領有権の既成事実化を図る狙いがあるからとしか見えない。尖閣は歴史的にも国際法上も日本の領土であることは明らかだ。

 岸田首相は昨秋、中国の習近平国家主席との会談で、このブイの即時撤去を求めたが、いまだに中国は応じていない。

 中国が日本の要求を無視し続けるなら、政府はブイを自ら撤去すべきではないか。中国側に事前通告するなど丁寧に手順を踏んだうえで実施する必要がある。

 尖閣沖における中国海警船の行動は目に余る。昨年、接続水域で海警船が確認されたのは352日に達し、過去最多だった。

 最近は、中国軍の艦船の活動も目立つようになった。中国は尖閣を含む東シナ海上空に「防空識別圏」を一方的に設定し、その境界線付近に艦船を展開させ、自衛隊の航空機などを監視している。

 中国の軍事的な圧力に対抗するには、海保と自衛隊が連携して警戒監視に当たらねばならない。

 事態を悪化させないため、防衛当局間のホットラインを活用し、意思疎通を図ることも大切だ。

 政府は尖閣について「領土問題は存在しない」という立場だが、2014年に尖閣を含む東シナ海で日中が「異なる見解を有している」と記した文書を交わした。

 日本には、12年の尖閣国有化で悪化した日中関係を打開する狙いがあったが、中国が文書を盾に、日本が中国の立場を認めた、と主張するのは間違いだ。

 中国が日本と異なる見解を持っていることと、それを根拠に日本の主権を侵す行動に出ることは全く別問題で、容認できない。