「未記載でも合法と認識」「お金のことはあれこれ言うものではないと育ってきて」自民党“裏金”調査報告書に失笑の言い訳続々…「ドリル優子がなぜ聴き取り役?」の声も(2024年2月17日)

報告書の公表も評価は分かれる

失笑ものの言い訳を連発


報告書では、現職議員82人に加え、現職議員ではない選挙区支部長3人、8つの派閥・グループの代表者と事務総長ら91人が聴取対象になったという。

「現職議員82人と支部長3人はそれぞれ、安倍派と二階派の所属です。このうち安倍派の対象は79人で突出しています。一方、二階派は6人ですが、派閥の長である二階俊博元幹事長、武田良太総務大臣ら大物議員が名前を連ねています。

このうち、安倍派の森まさこ氏については、ほかの議員とは違う対応が取られたようです。森氏の夫が聴取を担当した弁護士事務所の所属であるため、『公平性を担保するため』として夫の所属先とは別の事務所の弁護士が行ったとしています」(同)

報告書では、議員がキックバックを受けたことを認識していた場合、認識していなかった場合、それぞれのケースに応じてその理由を無記名で回答させている。

「名前が出ない」という安心感もあってか、議員側は、失笑ものの言い訳を連発しているのが記されている。たとえばキックバックを「認識していた」とする議員の回答で、「収支報告書に記載しなかった理由」として、

「秘書によれば(中略)派閥の事務局から、領収書はいらないと言われた」
「もともと記載したいという思いはあったが、派閥事務局からの記載不要との説明を受けて、記載しなくても合法なのだと認識した」

などと弁明している。キックバックを「認識していなかった」とした議員からは、「派閥の事務所から秘書に対し(中略)派閥からは記載しないでほしい、記載すると他の議員に迷惑がかかると言われた」などの回答があったが、なかには次ページのように生々しい現場のやり取りを答えた者もいる。

「お金のことはあれこれ言うものではないと育ってきて…」
「担当秘書が派閥事務所に呼ばれて、還付金(=キックバック)を現金で渡された。(中略)派閥事務所からは『記載しなくてよい。場合によってはご自身のパーティーのほうに混ぜてもらったらよいのではないか』と言われた。(中略)指示に従って記載はしなかったが、秘書は使うと危ないと考えて現金でそのまま保管していた」

噴飯物だったのは以下の回答だ。

「日ごろ、お金の増減の確認ぐらいしかしていなかったが、会計の確認の習慣を持っておくべきだったと反省している」
「お金のことはあれこれ言うものではないと育ってきて、経理のことは秘書に任せていたが、監督責任を痛感している」

報告書は、キックバックの使途についても調査しており、「会合費」「懇親費用」などのほか、「手土産代」「弁当代」「書籍代」といった政治活動との関連が曖昧なものも。「気持ち悪いと思って使わなかった」「“裏金”みたいなものではないかと思い、全額残した」と違法性を認識していたかのような回答もあったという。

報告書は、調査を踏まえた「再発防止に向けた提言」を打ち出しており、「一人ひとりの議員・秘書において、法令違反やコンプライアンス上グレーな状況を把握した際に、本当にこのやり方でいいのか、霧を晴らす術はないのかを妥協なく追求する姿勢が徹底できなかった」と断じている。

さらに、「上の者に対する畏怖や忖度から指摘されるべきことが指摘されないと不正は重症化」すると指摘。「当選回数による序列や人事への懸念から、若手議員が意見しにくい閉鎖的な組織風土が派閥内に生まれてしまっていたのではないか」と派閥政治が生んだ弊害を訴えている。

結党以来、何度も「政治とカネ」の問題に見舞われてきた自民党。果たして報告書が提案する道筋に沿って、根深い問題の根幹となっている派閥を解消し、再生はできるのだろうか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班