こうした警察活動は「レイシャル・プロファイリング」といい、偏見を助長するなどの問題が国際的に指摘される。日本では3人以外からも被害の訴えが相次ぐ。
問われているのは公権力による差別的行為である。何のいわれもないのに、見た目を根拠に職務質問された人の恐怖や悔しさは計り知れず、決して許されない。
異なる民族の人と接する機会が増す中、問題を放置したままでは多様性を尊重した共生社会は構築できまい。国は提訴を重く受け止め速やかに是正する必要がある。訴訟でも真摯(しんし)に対応すべきだ。
原告は日本国籍や永住権を有する。長年、外見の特徴から警察に呼び止められる経験をしてきた。
「大勢の前で犯人のようにされた」「警察署に連行され、指紋も取られた」との回答もあった。
在留外国人数は過去最多を更新したが、刑法犯などで摘発された外国人は年々減っている。外国人には犯罪者が多いという見方は根拠のない偏見でしかない。
警察は市民の信頼を得て地域の安全を担う。その警察にこんな偏見がまかり通れば市民も影響され、社会の分断を招きかねない。
国は現場に残る差別意識を直視し、改善を図らねばならない。
職務質問の実務や禁止事項を明確化して、警察官への指導を強化するべきだ。不当に扱われた当事者から警察官が直接、話を聞く研修も検討してもらいたい。