人口減少加速 現実直視し対策強化を(2024年2月12日配信『北海道新聞』-「社説」)

 人口減少が新たな段階に入ったと言える。備えが急務だ。
 国立社会保障・人口問題研究所が発表した2050年までの全国の地域別将来推計人口によると、北海道は382万人となる。
 全道の市町村の全てで減少し、522万人だった20年の国勢調査から3割弱減る。
 少子化対策は必要だが効果はすぐには上がらない。人口減少と高齢化の加速を前提として包括的な対策を講じる必要がある。
 道内の中核都市は軒並み著しい人口減少に見舞われる。函館市は50年には15万人ほどになる。釧路市は10万人を下回り、小樽市は5万5千人余となる。千人を割り込む小規模自治体も増える。
 人口構成も変化する。高齢者の割合は増えるが、数自体は40年以降、多くの自治体で減少する。
 住民の合意を前提として、公共施設の集約や、まとまって暮らす集住化の検討も必要となろう。公共サービス維持のため自治体同士の連携がますます重要となる。
 少子化による自然減に加えて、道外転出による社会減にも歯止めが掛かっていない。住民基本台帳に基づく人口移動報告によると、北海道は昨年まで28年連続で転出超過が続いている。
 札幌市は転入者の方が多く、特に65歳以上の転入超過は2404人と全国最多だった。ただ道外へ出る若い世代も目立ち、人口流出を食い止める「ダム機能」を十分果たしているとは言えない。
 50年には道民の2人に1人以上が札幌圏に住む見通しだ。過疎地域を追うように高齢化する都市部の生活基盤をどう維持するのか、議論を急ぐ必要がある。
 増田寛也総務相らがまとめた14年の「増田リポート」は、少子化の要因として若い女性が東京圏に流出することを指摘した。
 次世代の子どもを産む人口の「再生産力」が失われれば、自治体は消滅すると警鐘を鳴らした。
 人口問題研究所の推計では東京都だけが50年の人口を増やす。東京一極集中を是正する国の地方創生政策は効果を上げていない。
 2100年には全国の人口は約6300万人になるという。
 増田氏ら経済界有志などでつくる「人口戦略会議」は先月、人口を8千万人規模で安定させる目標を掲げるよう政府に提言した。
 若者に魅力のある雇用の場づくりにさらに知恵を絞りたい。出産や子育てを安心して行える施策も不可欠となる。官民挙げて重層的に進めてほしい。