獄中生活を経験した唯一の大臣 河井元法相が訴える刑務所改革「受刑者の声なき声を聞いて」(2024年10月19日『関西テレビ』)

「出所した人たちが刑務所の中の経験を話したところで『犯罪者なんだから塀の中で苦しい体験をして当然だ』という気持ちを持ってる人が多いんじゃないかなと思う。でもひょとして私だったら、社会と出所者のギャップを埋めることができるんじゃないか、私にはそれに力を注ぐ責務があるんじゃないか」

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聴衆を前に自らの刑務所での体験をこう切り出したのは、大臣・副大臣そして受刑者を経験した唯一の人物、河井克行法務大臣です。

長年、犯罪者の更生保護に取り組み2007年に法務副大臣、2019年に法務大臣に就任した河井克行氏。

しかし、法務大臣に就任したその年の参院選をめぐり地元議員ら100人に約2900万円を配り買収した公職選挙法違反の罪で逮捕・起訴され、2021年、懲役3年の実刑判決が下されました。 2023年11月に仮出所し、すでに刑期を終えた河井元大臣は19日、京都市で開かれた日本犯罪社会学会の大会で受刑者を経験した唯一の元大臣として、刑務所での更生の理想とギャップを語りました。

河井克行法務大臣】「まず(受刑者が)心情を話す機会が全くない。工場の刑務官は、実に煩瑣な業務に追われている。一人一人に寄り添う余裕など到底ありません。だから本当に反省してるのかどうかわからない状態のまま出て行ってる人もいるんじゃないかと考えます」 また、再犯を防ぐには人生に絶望している受刑者に社会で通用する資格や学力、職業能力を身に着けさせ再起を促すプログラムが必要であるが、実際にはそのようなものはほとんどなかったと話します。 【河井克行法務大臣】「9つの職業訓練の工場があったが、取れる資格に魅力がない。中には資格が取れないコースもあった。受刑者の間では『すぐに使えるのは介護福祉士ぐらい。だから行かない』という冷めた声が多かった」 更生のための矯正指導日には、視聴覚教材を見てワークブックをしたり読書感想文を書いたりするが、提出物は全てやりっぱなし。矯正指導日は「作業に出なくていい休みの日」と化している実態も明かしました。 副大臣時代、刑務所を視察するたびに職員から聞いた『受刑者の更生のために全力でやってる』という力強い言葉は、実態とあまりにもかけ離れていたことを痛感したといいます。 法改正により2025年6月1日から現在の懲役刑と禁錮刑は「改善更生を図るため、必要な作業、又は指導を行う」拘禁刑という新たな刑に一本化されます。

獄中生活を体験した元大臣は、真の更生を図るためには「受刑者たちの声なき声を徹底的に聞きとること。特に教育や就労支援についての声を聞き、職員の意識改革を行い、役所のための刑務所ではなく受刑者のためになる刑務所に変わらないといけない」と訴えました。