袴田巌さん「完全な無罪が実った」「長い闘いがございました」…支援団体の集会であいさつ(2024年10月15日『読売新聞』)

キャプチャ
手を上げて支援者らにあいさつする袴田さん(中央)とひで子さん(右)(14日、静岡市で)
 
 1966年の静岡県一家4人殺害事件で、再審無罪が確定した袴田巌さん(88)が14日、静岡市内で開かれた支援団体の集会に姉ひで子さん(91)と共に姿を見せ、「完全な無罪が実った」とあいさつした。
 弁護団や支援者、弁護側鑑定に協力した法医学者ら約250人が集まった。袴田さんは長期の身体拘束の影響で意思疎通が難しくなっているが、「長い闘いがございました。私もやっと、完全な無罪が実りました」と語った。
 弁護団長を務め、今年1月に82歳で亡くなった西嶋勝彦弁護士の長男一樹さん(44)も登壇し、「父に完全無罪を聞かせたかったが、巌さん、ひで子さんが元気なうちに解決できてよかった」と述べた。

判決後の「肉声」と支え続けた91歳実姉の胸中とは…袴田巌さんは「58年越しの無罪」に何を想うのか(2024年10月15日『FRIDAY』)
 
キャプチャ
「ついに完全に全部勝った」
ひで子さんと再審無罪を報じる新聞を読む袴田さん。ひで子さんは「もう心配することないよ」と励ました
「被告人は無罪」
力強い裁判長の声が、法廷内に響き渡る。その瞬間、傍聴席から「よしっ」と小さな歓声が聞こえた――。
キャプチャ
逮捕から50年が経過し、浜松の街を歩く袴田巌さん
9月26日午後2時2分、強盗殺人などの罪で逮捕・起訴された確定死刑囚・袴田巌(いわお)さん(88)の再審が静岡地方裁判所で行われ、無罪判決が言い渡された。
袴田さんは’66年、自身が勤務していた味噌製造会社の専務の一家4人を惨殺したとして逮捕された。ほぼ一貫して無罪を主張していたが、’80年に死刑が確定した。判決を不服とした弁護団が裁判のやり直しを請求し、’14年に静岡地裁は再審開始と釈放を決定。一度は東京高裁によって取り消されたものの、最高裁が差し戻して’23年に裁判のやり直しが認められた。今回の判決で、死刑判決の重要証拠は、警察と検察が連携して捏造したものと認定された。
判決の翌日、袴田さんを長年にわたって支え続けた姉のひで子さん(91)は、無罪を一面トップで伝える朝刊各紙をテーブルに並べて言った。
「ほら巌、無罪判決が出たんだよ。3つの証拠捏造を認定って書いてあるでしょ。裁判所がそう認めてくれたんだよ」
「…………」
袴田さんは熱心に紙面を読んでいたが、終始無言だった。長い歳月に思いを馳せ、胸中で慟哭していたのか。代わりに、ひで子さんが判決をこう振り返った。
「無罪の一言が神々しく聞こえました。その後の言葉は、あまり覚えていないんですよ(笑)」
判決から3日後の29日、静岡市で行われた無罪報告会に袴田さんは車いすに乗って出席。初めて公の場で発言をした。
「(無罪判決は)待ちきれない言葉であります。無罪勝利が完全に実りました。ついに完全に全部勝った。きょうはめでたく、皆さんの前に出てきた」
数多くの支援者を前に、袴田さんは58年ぶりの自由を噛み締めていた。
『FRIDAY』2024年10月18・25日合併号より