生活保護の受け取り偽装?桐生市職員2人を告発へ 支払わないまま受領簿に無断で押印か…しかも別人のハンコ(2024年10月13日『東京新聞』)

 
 群馬県桐生市で相次いだ生活保護制度の不適切な運用を巡り、市内在住で生活保護を利用している70代の外国籍女性が、生活保護費の受領簿に市福祉課職員が同姓の他人の印鑑を無断で押印したとして、同課のケースワーカーと指導員の2人を私文書偽造や虚偽公文書作成などの容疑で近く県警に刑事告発することが、支援団体への取材で分かった。

私文書偽造や虚偽公文書作成などの容疑 初の刑事告発

桐生市役所

桐生市役所

 一連の問題では、市の内部調査で利用者から預かった印鑑が計1948本に上り、書類への無断押印が行われていたことも既に明らかとなっているが、当事者が告発するのは初めて。支援者数人も告発に加わる予定という。
 女性は2022年1月に日本人の夫が病死後、同居していた夫の親族から暴力や嫌がらせを受けた。このため、知的障害がある長男とともに桐生市内のアパートへ避難。23年9月下旬に生活保護を申請し、約1カ月後に保護決定が出た。しかし、保護費支給が大幅に遅れ、女性を支援する弁護士が市へ説明を求めた過程で無断押印が発覚した。
 告発状によると、ケースワーカーは同年10月27日、保護費が支払われていないにもかかわらず、保護費受領簿に女性と同姓の印鑑を押印し、女性が保護費を受け取ったように偽装。また、ケースワーカーと指導員は同年11月27日、女性や弁護士、司法書士らと面会した際にこの受領簿を閲覧させ、正しい公文書のように装ったとしている。

◆市は面会の場で無断押印や虚偽説明を事実を認めた

 市は当初、女性本人が押印したと説明していたが、同年12月、本人や支援者らとの面会の場で「押印は支給の会計処理を完結させるためだったが、本人以外の印鑑を使うのは問題がある処理なので、指摘を受けて動転して事実と異なる説明をしてしまった」と無断押印や虚偽説明を認めた。
 女性は東京新聞の取材に「私と同じような目に遭う人を出さないために告発を決めた。捜査機関にきちんと調べてもらいたい」と話した。(小松田健一)

 桐生市生活保護をめぐる問題 2023年11月、群馬県桐生市が保護費を1日1000円に分割した上、満額を支給しなかった事例が、群馬司法書士会から市への申し入れによって発覚。その後も満額不支給や申請を窓口で拒む「水際作戦」が常態化していたことが表面化し、同年12月に荒木恵司市長が謝罪、第三者委員会などで実態解明と再発防止策を検討する方針を表明した。今年4月には満額不支給だった利用者らが市に対し、損害賠償や慰謝料の支払いを求める訴訟を起こした。