作家・雨宮処凛さん、桐生生活保護問題に「独自ルールすさまじい」(2024年4月5日『毎日新聞』)

雨宮処凛さんらから要望を受ける群馬県担当者=県庁で2024年4月5日午前10時半、田所柳子撮影

雨宮処凛さんらから要望を受ける群馬県担当者=県庁で2024年4月5日午前10時半、田所柳子撮影

 群馬県は5日、桐生市生活保護費の支給で不適切な対応をしていた問題で、取り組みを求めた全国調査団に対し、市町村に対する監査と相談窓口の担当者向けの研修を見直すと約束した。調査団が同日、県と市に面談。市が保護費総額を急減させたなどとして、徹底的に実態を解明するよう要望した。

 作家で反貧困活動家の雨宮処凛さんは「桐生市生活保護違法事件全国調査団」の呼びかけ人の一人で、5日の県への要望にも同席した。調査団に加わった理由について、「(桐生市は)めちゃくちゃなことをやっている。知れば知るほどびっくりすることばかりなので来た」と取材に話した。

 生活保護を巡っては、これまでも2012年に生活保護を門前払いされた札幌市の姉妹が病気や寒さで死亡し、20年には大阪府八尾市で生活保護受給者の母子が餓死・孤立死するなど、自治体が窓口で生活保護の申請を阻む「水際作戦」や生活保護の実効性が問題視されてきた。

 雨宮さんはこれらの事件と比べても、桐生市が10年間で生活保護受給世帯を半減させ、直近で受給する母子世帯が月平均2世帯まで減るなど、特異さが際立つ点を指摘する。分割支給を実施し、通院のための交通費をほとんど支出していないのも特徴で、「さまざまな事件を見てきたが、桐生は独自ルールがすさまじい」と批判。監査する立場の県についても「どこまで状況が分かっているのか。分かっていれば、こんなに放置されていない」と述べた。【田所柳子】

 

群馬・桐生の生活保護題 調査団は県にもクギ 監査見直し約束(2024年4月5日『毎日新聞』)

 
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群馬県庁=前橋市で2019年2月22日、菊池陽南子撮影
群馬県庁=前橋市で2019年2月22日、菊池陽南子撮影

 群馬県は5日、桐生市生活保護費の支給で不適切な対応をしていた問題で、取り組みを求めた全国調査団に対し、市町村に対する監査と相談窓口の担当者向けの研修を見直すと約束した。県地域福祉課の米沢孝明課長は「桐生市生活保護の取り扱いは大変遺憾だ。再発防止に努めたい」と述べた。調査団は同市の問題を見過ごした県にもクギを刺した。同市内では市民集会も開き、申請を抑える市の「水際作戦」などに批判が相次いだ。

 「桐生市生活保護違法事件全国調査団」(団長・井上英夫金沢大名誉教授)が同日、県と市に面談。市が保護費総額を急減させたなどとして、徹底的に実態を解明するよう要望した。

 県はこれまでの監査で、同市による分割支給や支給額の不足、1900本以上保管した印鑑での無断押印などを把握できなかった理由について、「記録がないと確認もできない」と説明。今後の監査ではこれらを重点項目として確認する。また、調査団が「全担当者が必ず受ける人権研修をやってほしい」と要望したのに対し、窓口担当職員が受給者の立場を尊重するよう講義やグループワークなどで研修を強化する考えも示した。

 調査団の一人は県内の別の自治体についても、「派遣切りに遭い、今日食べるものがなく、交通費も出せない人に『親元に帰ればいい』と却下した例もある。桐生市だけの問題ではない」と訴えた。

 同市で開いた市民集会では、「つくろい東京ファンド」の小林美穂子さんが「『水際』で(申請者を)追い散らしている」と指摘。花園大の吉永純教授は「市の生活保護行政の全面的な刷新が必要だ」と述べ、「反貧困ネットワークぐんま」の町田茂さんも「市は生活保護費を1円でも減らすことに血眼になっている」と批判した。

 同市では2011年に生活保護の被保護者数が1163人、保護費19億6121万円だったが、22年には被保護者数が547人、保護費が8億7313万円に半減した。申請して却下される率は、22年度で全国平均の7・5%に対し、20・3%。21年度には48・2%だった。【田所柳子、遠山和彦】