不記載議員対応 またもや「言行不一致」か(2024年10月8日『産経新聞』-「主張」)

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記者団の取材に応じる石破茂首相(自民党総裁)=6日午後、党本部(奥原慎平撮影)
 石破茂首相(自民党総裁)と党執行部が、派閥パーティー収入不記載に関係した同党衆院議員らへの衆院選対応を決めた。
 不記載議員を選挙区で原則公認する一方、比例代表への重複立候補は認めない。旧安倍派幹部3人に加え、国会の政治倫理審査会(政倫審)に出席していない旧安倍派、旧二階派の議員3人も公認を見送る。首相は「国民の不信や怒りにきちんと対応することが必要だ」と語った。
 今回の措置は、議員の政治生命に関わる方針転換である。衆院選で苦戦を強いることを見越した選挙目当ての策といえる。党執行部は当初、重複立候補を認める構えだった。首相は言行不一致と指摘されても仕方のない行動にまたもや走ったことになる。
 首相は総裁選時に、今回のような措置を講ずると語っていなかった。出馬表明時こそ「公認するにふさわしいかどうかの議論は徹底的に行われるべきだ」と非公認の可能性に言及したが批判を浴びて軌道修正していた。総裁選時に何も語らずに議員に支持を求め、当選したら掌(てのひら)返しをするのは総裁選という選挙を軽んじている。騙(だま)し討ちのような手法は感心しない。
 総裁選の公約で「不記載議員一人一人と向き合い厳しく反省を求める」と明記したが、当選後にそれを行っている形跡もない。首相は議員への聞き取りについて「厳しい時間の制約はある」と述べて消極的だ。だが、前言を翻して予算委員会を開かず衆院解散を急いでいるのは首相ではないか。
 石破内閣への世論の視線は厳しい。早期解散に走ったり、総裁選で掲げた主要政策を次々に軌道修正したりした言行不一致や、挙党体制をとらない組閣などが響いている。いずれも首相自身が招いた事態である。
 強引な衆院選対応を決めても党の団結を損なう。また、有権者の心にどこまで響くかは不透明だ。
 公認基準をめぐっても解せない点がある。「党役職停止」処分中の議員のうち、政倫審で説明した議員は非公認の対象から除いた。政倫審で弁明はあったが、それで事件が解明されたとは到底言えない。石破首相と自民に求められるのは、なぜ事件が起きてしまったかを説明することだ。