袴田巌さんの姉、ひで子さん
袴田巌さんの姉、ひで子さん
Q.検察が控訴断念の方針を示した。まず率直な気持ちは?
A.「まあ、これでやっと、一区切りつくと思ってうれしいです。一段落というか、一件落着になると思うと、大変うれしゅうございます」
Q.一報はどのように確認されましたか?
A.「電話で小川弁護士から連絡いただきました」
Q:巌さんには報告?
A.「巌には全然ね、もうその前に、街へ出掛けましたのでね、全然言ってありません」
Q.このあと報告をする?
A.「もう帰っての具合ですね、帰ってきての具合で、話するかどうか、ちょっと分かりません。もうすでに、無罪で勝ったよっていうことは、言ってありますのでね、改めて言うほどのことじゃないと思っております」
Q(控訴断念の一報)を聞いたときの気持ちは?
A.「気持ちってものはね、もうわかっていたようなものだから別に。別段、感激もしませんでした(笑)」
袴田さん無罪確定へ 検察、再審控訴断念(2024年10月8日『静岡新聞』)
現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件で死刑とされた元プロボクサー袴田巌さん(88)のやり直しの裁判(再審)で、無罪を言い渡した静岡地裁の判決について、検察当局は8日、控訴を断念すると表明した。事件発生から58年、再審の申し立てから43年の歳月を経て、袴田さんの汚名がすすがれる。
死刑事件で再審無罪が確定するのは89年の「島田事件」以来で5件目となる。
静岡地裁は9月26日の再審無罪判決で、(1)確定判決が唯一任意性を認めていた検察官作成の「自白調書」(2)事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかったシャツやズボンなど血染めの「5点の衣類」(3)袴田さんの実家から「発見」されたズボンの共布ーの三つの証拠捏造(ねつぞう)があったと認定した。
(1)については、警察と検察の「連携」による非人道的な取り調べで獲得された「実質的な捏造」と判断。最大の争点だった(2)は「発見の近い時期に捜査機関によって血痕をつけるなどの加工がされ、タンク内に隠された」と指摘した。(3)は押収経緯にも検察官の立証活動にも「看過できない不合理」があり、捜索前に捜査機関が持ち込んだと考えるしか説明できず「捏造と認めるのが相当」とした。
判決直後から全国52の弁護士会が控訴権放棄を求める会長声明を出したほか、弁護団が始めたオンライン署名への賛同者数は5万2千人を突破。日本プロボクシング協会や多数の法学研究者からも同様の要請が出され、各方面から控訴断念を望む声が強まっていた。