石破新内閣、マイナも手のひら返し? 保険証廃止「日程通りやりたい」新大臣が口々に…(2024年10月2日『東京新聞』)

 
現行の健康保険証を12月2日で廃止し、マイナ保険証に一本化するとの従来の政府方針に対して、石破茂新首相は就任前、一時見直しにまで言及していた。「納得と共感」を掲げて発足した石破内閣において、関係大臣は2日、就任会見で何を語ったのか―。(高田みのり、戎野文菜)
石破茂首相は自民党総裁選への出馬を表明していた9月8日、保険証廃止について「期限が来ても納得しない人がいっぱいいれば、併用も選択肢として当然だ」と記者団に語った。
総裁選で掲げる政策発表を行った10日の会見でも、「一部の人々に不便や不利益を与えないような配慮をしながらやっていきたい」と訴えていた。
2日の就任会見では、新たな担当大臣に、現行保険証の廃止時期の見直しについて、記者から質問が相次いだ。

◆デジタル大臣「日程通りやりたい」

会見で記者の質問に答える平将明デジタル相=2日、デジタル庁で

会見で記者の質問に答える平将明デジタル相=2日、デジタル庁で

平将明デジタル相は、就任会見で、予定通り12月に現行保険証を廃止する方針を示した。
「さまざまな議論をする中で(廃止の)日程が決まったと承知している」と発言。マイナ保険証を持たない人には、資格確認書が送付される仕組みも整っているとして「従来の日程通りに進めていきたい」とした。
一方、総裁選期間中に現行保険証との併用も選択肢に挙げていた石破首相との考え方の違いを問われると、「『12月2日から全部マイナ保険証でいくんだ』ということには、それはちょっと選択肢があった方が良いんじゃないかということで発言をされたのでは」と言及。紙の選択肢として資格確認書が用意されているとして、「(首相との意見に)大きく齟齬(そご)はない」と答えた。

平将明(たいら・まさあき)氏
東京都江戸川区生まれ。早稲田大学法学部卒業。民間企業を経て、家業の青果仲卸に入社、同社代表取締役社長。2005年衆院選で初当選した「小泉チルドレン」。デジタル分野に強く、自民党広報本部副本部長兼ネットメディア局長、内閣府副大臣(防災、IT政策、行政改革等を担当)などを務めた。旧石破派の創設メンバー。57歳。東京4区衆院当選6回。

◆厚労大臣「方針は堅持したい」

会見で保険証廃止の方針を堅持する考えを示した福岡資麿厚生労働相=2日、厚生労働省で

会見で保険証廃止の方針を堅持する考えを示した福岡資麿厚生労働相=2日、厚生労働省

福岡資麿厚生労働相も、就任会見で「12月2日に保険証の新規発行を停止する方針は堅持したい」と明言した。
「患者本人の健康医療情報に基づくレベルの高い医療の提供を可能にするほか、緊急時を含め適切な医療の提供ができる」として「利用促進を図っていくことが極めて重要」と、これまでの政府方針を踏襲した。
マイナ保険証が使えない人や不利益が出る人への対応は、「不利益を感じる人がいないように、様々な対応を丁寧に講じていく必要がある」と発言。「マイナ保険証へのスムーズな移行が図られるよう、対応に万全を尽くしていきたい」と述べた。

福岡資麿(ふくおか・たかまろ)氏
佐賀県出身。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。三菱地所株式会社入社し、東京駅前の「丸の内ビルディング」(丸ビル)の開業に携わった。2005年衆院総選挙で初当選。落選を経て10年の参院選で国政に復帰した。厚生労働行政に通じ、自民党厚労部会長や参議院厚生労働委員会筆頭理事、内閣府副大臣などを務めた。旧茂木派。51歳。佐賀選挙区。参院当選3回(衆院1回)。

◆後になってやった「必要な検討」

保険証廃止を廃止を決めた閣僚や首相のやり取りの記録がない問題については「必要な検討を行った上で、関連法案が可決成立した」と説明したうえで「国民の皆様に対して丁寧にわかりやすい説明に努めてきたが、引き続き丁寧な説明を行ってまいりたい」と話した。
福岡厚労相は「必要な検討」をした場として、「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会」を挙げた。だが、この検討会が初めて開かれたのは、河野太郎前デジタル相が廃止時期を表明した2022年10月13日の会見から2か月後の12月6日だった。