再審無罪機に、法改正を 日弁連が集会 各地結び思い共有、袴田ひで子さんも訴え(2024年9月29日『静岡新聞』)

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再審無罪判決後初めての集会で拍手を受ける袴田ひで子さん(左奥)=28日午後、都内
 日本弁護士連合会(日弁連)は28日、元プロボクサー袴田巌さん(88)に再審無罪判決が言い渡されてから初めての市民集会を都内で開いた。全国にいる再審請求中の当事者らをオンラインでつなぎ、規定が乏しく早期救済につながっていない再審法(刑事訴訟法の再審規定)について、この機会に改正しようと決意を共有。袴田さんの姉ひで子さん(91)も「何らかの形にしないと私も思い残すことになる」と呼びかけた。
 冒頭、袴田さんの弁護団事務局長を務める小川秀世弁護士が26日の判決を報告した。検察官調書などの捏造(ねつぞう)が認められたことに関連し、第2次再審請求審で取り調べの録音テープが開示されていた意義を説明。非人道的な取り調べが明らかになったことで「これで力強い判決を書けたのでは」と推測した。
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集会で再審法改正を訴える袴田ひで子さん=28日午後、都内
 請求審では結果的に、検察官の手元にあった600点の証拠が開示された。重要な証拠の開示は「弁護活動の活力、元気の源になった」とも振り返り、現在は規定のない証拠開示を法制化する必要性を強調した。
 集会はその後、東京と札幌、仙台、名古屋、長野、福井、大阪、福岡、鹿児島の各会場をオンラインで結び、再審を求めてきたのは袴田さんだけではないと紹介。このうち、埼玉県狭山市で女子高校生が殺害された「狭山事件」で再審請求中の石川一雄さん(85)は「再審法を変えないと、いつになっても冤罪(えんざい)は晴らせない」とした。

菊間千乃氏「間違いがあってもただす組織で…」袴田巖さん無罪判決受け再審制度の法整備に期待(2024年9月29日『日刊スポーツ』)
 
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菊間千乃氏(2021年3月撮影)
 元フジテレビアナウンサーで弁護士の菊間千乃氏は、28日夜に放送されたTBS系「情報7daysニュースキャスター」(土曜午後10時)に出演し、いわゆる「袴田事件」で死刑が確定していた袴田巖さんに対し、9月26日の再審で静岡地裁が無罪判決を言い渡したことについてコメントした。
 「袴田事件」は58年前の1966年、旧清水市で一家4人が殺害された事件。1度は死刑判決が確定したが、袴田さんは冤罪(えんざい)を訴えてきた。2度の再審請求をへて2014年に、静岡地裁が再審開始と袴田さんの刑の執行停止を決め、袴田さんは釈放された。しかし、その後再審開始決定が取り消されるなどし、最高裁が2020年にこの決定をさらに取り消し、東京高裁に差し戻すなど、司法の判断も混乱した。死刑が確定した事件としては戦後5件目の再審が昨年から行われ、今回の無罪判決に至った。今後、検察側が控訴するかが大きな焦点になっているが、過去の4件では検察は控訴せず、無罪判決が確定している。 菊間氏は「袴田さんが無罪を勝ち取るまでに、58年もかかった。これはけしてひとごとではなくて、私たちは人権というものを真剣に考えなくてはいけない大きな問題」と、弁護士としての観点から指摘した。
 「捜査機関に間違いがあってはいけないですけど、人間だからやっぱり間違いはある。それがあったときに誤りをきちんとただす組織であってほしい」とした上で、再審制度の現状に言及。「日本には再審制度というものがありますが、なかなか法律がきちんと整備されていないところがある。捜査機関が手元にある証拠を開示しなさいと、裁判所が命じるということが書いていないとか。いろいろなことがあって、(今回の事件で)再審が認められてここにくるまでも10年かかっている」と述べた。
 「これを機に、弁護士会の方も再審の法律をもっと改正していこうという動きはあるので、ぜひそういうふうに動いてほしい」とも、口にした。